ジャパニーズジンとは|定義はあるのか、国産82銘柄で見る「日本のジン」の中身

ジャパニーズジンは、日本でつくられ、柚子や山椒、茶、檜などの日本の素材や、焼酎・米の酒を土台に使ったジンを指す呼び名です。ジャパニーズウイスキーには業界の表示基準がありますが、ジンについては、2026年9月時点で同じ性格の基準の公表を確認できていません。そのため、どこまでを「ジャパニーズ」と呼ぶかは銘柄ごとに異なります。図譜の国産82銘柄では、ボタニカルを公表している65銘柄のうち43銘柄が素材の産地まで書いていて、確かめる手がかりはラベルより公式サイトの記載にあります。
「ジャパニーズジン」という言葉は、売り場の棚札にも、銘柄の名前にも使われています。ただ、ジャパニーズウイスキーと同じように、決まった条件を満たしたジンだけが名乗れる言葉なのかというと、事情が違います。この記事では、言葉の意味と決まりごとの有無を先に整理し、そのうえで図譜に収録した国産82銘柄の公式記載から、「日本のジン」の中身を数えます。ジンそのものの定義はジンとはに、クラフトジンという言葉の整理はクラフトジンとはにまとめています。
ジャパニーズジンとは|日本の素材と土地でつくるジンの呼び名
ジャパニーズジンは、日本でつくられ、日本の素材や日本の酒を土台に使ったジンを指す呼び名です。ジンである条件、つまりジュニパーベリー(杜松の実)の香りを主にした蒸溜酒であることは、海外のジンと変わりません。そのうえで、次のような点に「日本の」が表れます。
- つくる場所 — 国内の蒸溜所で蒸溜している
- 素材 — 柚子・山椒・緑茶・檜・桜といった、日本で採れる植物をボタニカルに使っている
- 土台の酒 — 焼酎や泡盛、米からつくった蒸溜酒をベースにしている
この3つすべてを満たす銘柄もあれば、ひとつだけの銘柄もあります。どれを満たせば「ジャパニーズ」と呼べるのかという線は、次に見るとおり、いまのところ引かれていません。
決まった定義はあるのか|ジャパニーズウイスキーとの違い
同じ「ジャパニーズ」を冠する言葉でも、ウイスキーとジンでは決まりごとの有無が異なります。
| ジャパニーズウイスキー | ジャパニーズジン | |
|---|---|---|
| 酒税法の品目 | 「ウイスキー」という品目がある | 品目はなく「スピリッツ」に入る |
| 業界の表示基準 | 日本洋酒酒造組合が2021年に制定、2024年4月から全面適用 | 同じ性格の基準の公表は確認できていない |
| 場所の条件 | 原料の糖化から蒸溜・貯蔵・瓶詰めまで国内 | 決まりなし |
| 名乗れるかどうか | 基準を満たしたものだけ(組合員の自主基準) | つくり手の判断 |
ジャパニーズウイスキーの表示基準は、日本洋酒酒造組合が定めた業界の自主基準です。国内で糖化・発酵・蒸溜し、国内で3年以上貯蔵することなどを条件にしています。背景には、海外の原酒だけを使ったウイスキーが「ジャパニーズウイスキー」として売られる例が出ていた事情がありました。
ジンについては、2026年9月時点で、法律上の定義も、業界団体が公表した表示基準も確認できていません。「ジャパニーズジン」は、つくり手が自分の銘柄の性格を伝えるために使っている言葉、というのが実際のところです。図譜のなかにも、「Japanese GIN WABIGIN The Forest」(鹿児島県)や「The Japanese Craft GIN 黄金井」(神奈川県)のように、商品名そのものに「Japanese」を入れている銘柄があります。
決まりがないということは、どこまでを「日本のジン」と見るかを、飲む側が自分で確かめる余地がある、ということでもあります。その手がかりを、図譜のデータから見ていきます。
国産82銘柄は39都道府県に|つくる場所の広がり
杜松の図譜には、110銘柄のうち国産の銘柄が82本あります。国産クラフトジン79本と、大手の国産3本です。蒸溜所の数では69か所、都道府県では39都道府県にまたがっています。
いちばん多い鹿児島県は、WABIGINをつくる本坊酒造 マルス津貫蒸溜所や、KOMASA GINをつくる小正醸造のように、焼酎の蔵元がジンを手がけている県です。地方別に見ると九州・沖縄が18本で最も多く、関東15本、近畿13本、中部12本と続きます。
ジンは、ウイスキーのように長い貯蔵を経ずに出荷できます。焼酎や日本酒の蔵がすでに持っている蒸溜器と土台の酒を使って始められるため、各地に広がりやすかったと考えられます。土台の酒の内訳はジンの種類で数えています。
素材の産地まで書く銘柄は65銘柄中43
「日本の素材を使っている」と一口に言っても、その素材がどこで採れたかまで書いているかどうかは銘柄によって違います。図譜の国産82銘柄のうち、公式サイトでボタニカルを挙げているのは65銘柄です。そのうち43銘柄が、少なくとも1つの素材について産地を書いています。3本に2本の割合です。
国産の銘柄が産地を添えて挙げている素材の一例。果実だけでなく、海藻や木の枝まで使われています。(AIで生成したイメージです)
産地の書き方には、いくつかの型があります。
| 書き方 | 銘柄の例 | 公式が挙げる素材と産地 |
|---|---|---|
| 県・地域の名産を使う | 白兎-HAKUTO-(鳥取県) | 梨(鳥取県) |
| 町や村まで書く | AWA GIN(徳島県) | 木頭ゆず(那賀町)、阿波晩茶(那賀町・上勝町)ほか |
| 蒸溜所のある土地の産物を並べる | SAKURAO GIN ORIGINAL(広島県) | レモン、柚子、ヒノキ、牡蠣殻(いずれも広島) |
| 市町ごとに素材を書き分ける | 道後ジン(愛媛県) | せとか(松山市)、柚子(鬼北町)、七折小梅(砥部町)ほか |
果物や茶だけでなく、9148 #0101 Craft Gin standardの日高昆布、GOTOGIN the originの椿の実、南部美人クラフトジンの浄法寺漆のように、ジンの素材としては珍しいものも産地つきで挙がっています。こうした素材は、蒸溜所のある土地と結びついているからこそ選ばれたものです。
一方で、残る22銘柄は素材の名前だけを挙げています。柚子や山椒を使っていても、それが国産かどうかは書かれていません。「日本の素材」の中身をいちばん具体的に確かめられるのは、この産地の記載です。
ジュニパーは国産か|産地を書いている銘柄は3本
では、ジンの主役であるジュニパーはどうでしょうか。国産でボタニカルを挙げている65銘柄のうち、ジュニパーを明記しているのは51銘柄です。その産地まで書いているのは3銘柄でした。
ジュニパー(杜松)の枝と実。日本の山にも近い仲間が自生しています。(AIで生成したイメージです)
| 銘柄 | 蒸溜所 | 公式が書くジュニパーの出どころ |
|---|---|---|
| 白天狗(神奈川県) | 熊澤酒造 | 自社の田んぼ近くの山間で栽培 |
| 棘玉 クラフトジン スタンダード(埼玉県) | 武蔵野蒸留所 | 中福本店裏のマツザキの森で栽培 |
| NAKATSU GIN(岐阜県) | 中津川蒸留所 | 北マケドニア産 |
国内で育てたジュニパーを使う銘柄が2本、海外産と明記している銘柄が1本です。残る48銘柄はジュニパーの産地を書いていません。このほか、静岡県のSTANDARD CRAFT GINは、ジュニパーベリーに加えて、ジュニパーと同じ仲間の植物であるビャクシンを伊豆白濱神社から得て使っています。
つまり、ジャパニーズジンと呼ばれる銘柄でも、主役のジュニパーまで国産とは限らず、むしろ産地を書かないのが一般的です。日本らしさは、ジュニパーに重ねる素材や土台の酒の側で表されていることが多い、と読み取れます。素材ごとの使われ方はジンの原料とボタニカルにまとめています。
ラベルと公式サイトで確かめる3か所
決まった定義がない以上、「日本のジン」かどうかは自分で確かめることになります。見る場所は3つです。
- ラベルの製造者と製造場の所在地 — 日本で売られる酒類には、製造者の名前と製造場の所在地、品目、アルコール分などを表示する義務があります。所在地が国内なら、国内の製造場から出荷された酒だと分かります。輸入品の場合は、輸入した事業者の名前などが表示されます
- 品目が「スピリッツ」であること — 日本の酒税法にはジンという品目がないため、国産のジンの多くは品目が「スピリッツ」と表示されます。品目の欄に「ジン」とないのはこのためです
- 公式サイトのボタニカルと産地の記載 — ラベルの表示義務には、素材の産地やどこで蒸溜したかまでは含まれません。素材の産地や土台の酒は、公式サイトで確かめるのが確実です
1の所在地は、あくまで最終的に出荷した製造場の場所です。中身をどこで蒸溜したかまでは、ラベルだけでは分からない場合があります。ジャパニーズウイスキーの基準が「国内での蒸溜・貯蔵・瓶詰め」を細かく定めているのは、まさにこの点を埋めるためでした。ジンでこれに当たる情報は、3の公式記載にしかありません。
図譜では、各銘柄の蒸溜所・産地・ボタニカル・ベーススピリッツを、公式サイトの記載にもとづいて同じ位置に並べています。記載のない項目は「不明」のままにしているので、そこも含めて見比べられます。
地域と素材から、日本のジンを探す
ジャパニーズジンを1本選ぶなら、「どの土地の、どの素材か」から入ると、銘柄ごとの違いがつかみやすくなります。
- 土地から — 産地から探すで都道府県を選ぶと、その県の蒸溜所の銘柄が並びます。蒸溜所の見学についてはジン蒸溜所の見学にまとめました
- 素材から — 柚子、山椒、緑茶、檜、クロモジのように、日本の素材を使う銘柄を横断して辿れます
- 土台の酒から — 焼酎や泡盛をベースにした銘柄は、ジンの種類のベースの酒の節で数えています
選び方の全体像はクラフトジンの選び方に、国産ジンが生まれるまでの流れはジンの歴史にまとめています。図譜の全銘柄は図譜の一覧から見られます。
よくある質問
ジャパニーズジンとは何ですか?
日本でつくられ、柚子・山椒・緑茶・檜などの日本の素材や、焼酎・泡盛・米の酒を土台に使ったジンを指す呼び名です。ジュニパーベリーの香りを主にした蒸溜酒であることは海外のジンと同じで、つくる場所・素材・土台の酒のいずれかに日本の特徴が表れます。杜松の図譜には国産の銘柄が82本あり、39都道府県の69蒸溜所にまたがっています。
ジャパニーズジンに定義や基準はありますか?
2026年9月時点で、法律上の定義も、業界団体が公表した表示基準も確認できていません。ジャパニーズウイスキーには日本洋酒酒造組合が2021年に定めた表示基準があり、国内での蒸溜や3年以上の貯蔵などが条件になっていますが、ジンには同じ性格の基準が見当たりません。そのため「ジャパニーズジン」と名乗るかどうかは、つくり手の判断に委ねられています。
ジャパニーズジンのジュニパーは国産ですか?
国産とは限りません。図譜の国産65銘柄のうちジュニパーを明記しているのは51銘柄で、産地まで書いているのは3銘柄でした。白天狗(神奈川県)は自社の田んぼ近くの山間で、棘玉 クラフトジン スタンダード(埼玉県)は中福本店裏のマツザキの森で栽培したジュニパーを使い、NAKATSU GIN(岐阜県)は北マケドニア産を使うと公表しています。残る48銘柄はジュニパーの産地を書いていません。
ラベルでジャパニーズジンかどうか見分けられますか?
一部は分かります。日本で売られる酒類には、製造者の名前と製造場の所在地、品目、アルコール分などの表示義務があり、国産のジンの多くは品目が「スピリッツ」になります。所在地が国内なら国内の製造場から出荷された酒です。ただし、素材の産地や中身をどこで蒸溜したかは表示義務に含まれないため、公式サイトの記載で確かめるのが確実です。
クラフトジンとジャパニーズジンは同じものですか?
重なりますが、同じ言葉ではありません。クラフトジンは小規模な蒸溜所が独自のボタニカルでつくるジンを指す通称で、国を問いません。ジャパニーズジンは日本でつくられたジンを指す呼び名で、大手がつくる国産ジンも含みます。図譜の国産82銘柄では、クラフトジンが79本、大手の国産ジンが3本です。どちらにも法律上の定義はありません。