ジンの種類は7つ|ロンドンドライ・オールドトムなどの違いとラベルでの見分け方

ジンの種類は、型(スタイル)で分けると、ロンドンドライ・ドライ・オールドトム・プリマス・ジュネヴァ・シュタインヘーガー・コンパウンドの7つです。製法や産地の決まりが規則にあるのはロンドンドライ、ジュネヴァ、シュタインヘーガーで、ほかは通称や土地の名です。ほかに、つくり(蒸溜か漬け込みか)、国、土台の酒、ボタニカルでも分けられます。図譜の110銘柄では、公式に型を名乗るのは28本で、ロンドンドライ系13本のうち11本がイギリスの銘柄でした。国産82銘柄は型よりも産地とボタニカルを前に出していて、見比べるならボタニカルの系統(柑橘・スパイス・茶・木と葉・ハーブ・花)から入るほうが違いが分かります。公式がすすめる飲み方も型より国で分かれ、海外の銘柄はトニック割り、国産はソーダ割りやロックを挙げる銘柄が多く見られます。
ジンの種類は、型(スタイル)で分けるとロンドンドライ、ドライ、オールドトム、プリマス、ジュネヴァ、シュタインヘーガー、コンパウンドの7つです。ただ、棚のラベルに並ぶ「ロンドンドライジン」「ドライジン」「クラフトジン」は同じ階層の言葉ではなく、製法の決まりを指すもの、土地の名、通称にすぎないものが混ざっています。この記事では、7つの型を決まりごとと代表的な銘柄で整理し、そのうえで国ごとの違い、図譜に収録した110銘柄が実際にどの型を名乗っているか、ボタニカルの系統でどう分かれるか、種類によって公式がすすめる飲み方がどう違うかを数えます。ジンそのものの成り立ちはクラフトジンとはにまとめています。
ラベルの言葉で種類を見分ける|早見表
手元の瓶や売り場のジンがどの種類かは、ラベルに書かれた言葉でおおよそ見当が付きます。言葉ごとに、そこから分かることと分からないことを並べました。
| ラベルの言葉 | そこから分かること | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| LONDON DRY GIN | 香りは再蒸溜でだけ付け、蒸溜後に甘味・着色を足していない | どこでつくったか(産地の条件はない) |
| DRY GIN | 甘味を加えていない、という呼び名 | 製法の条件を満たしているか |
| DISTILLED GIN | ボタニカルと一緒に再蒸溜してつくった | 蒸溜後に何か足しているか |
| OLD TOM GIN | 甘味を加えた古い型の復刻 | 甘さの程度 |
| GENEVER/ジュネヴァ | 麦芽由来の蒸溜酒を使う、オランダ・ベルギー周辺の酒 | — |
| COMPOUND GIN | 蒸溜を経ず、漬け込みや混ぜ合わせでつくった | 使った素材の数 |
| クラフトジン/ジャパニーズジン | 通称。製法の決まりはない | 型・製法のどちらも |
| GIN とだけ | ジュニパーの香りが主のジンであること | 型・製法のどちらも |
日本で売られているジンの裏ラベルでは、酒税法上の**品目は「スピリッツ」**と書かれています。品目に「ジン」という区分はないため、種類を知る手がかりになるのは表ラベルの英語表記や商品名のほうです。スロージンのように甘味を加えたものは、品目が「リキュール」になっていることがあります。
ラベルの言葉が「GIN」だけ、あるいは型の表記が見当たらない銘柄も珍しくありません。図譜の110銘柄では、公式に型を確認できなかったのが82本ありました。そうした銘柄は、このあと見るボタニカルや産地で見比べることになります。
ジンの種類は3つの軸で分かれる
「ジンの種類」と言うとき、指しているものは3つあります。
- 型(スタイル) — ロンドンドライ、オールドトム、ジュネヴァなど。製法の決まりや産地に由来する呼び名です
- つくり — ボタニカルの香りを蒸溜で移すか、漬け込みで移すか。型の区分の土台になっています
- 原料 — 土台になる蒸溜酒(ベーススピリッツ)と、香りを与えるボタニカル
これに、どこの国でつくられたかという産地を加えると、売り場で見かける言葉はおおむね整理できます。
このうち、いちばんよく語られるのが1の型です。ただしこのあと数字で見るとおり、型を公式に名乗っている銘柄は多数派ではありません。順に見ていきます。
型(スタイル)で分ける|7つの呼び名
ジンの型として名前が挙がるのは、おおむね次の7つです。決まりごとの強さがそれぞれ違うことに注意してください。
| 型の呼び名 | 決まりごと | 見分けどころ | 図譜で名乗る銘柄の例 |
|---|---|---|---|
| ロンドンドライジン | EUの規則に条件がある | 蒸溜のときだけ香りを付ける。産地の縛りはない | Beefeaterなど13本 |
| ドライジン | 規則上の定義はない | 甘味を加えていないジン全般を指す広い呼び名 | 雪の窓 ドライジンなど6本 |
| オールドトムジン | 規則上の定義はない | 甘味を加えた、18〜19世紀の型の復刻 | 収録なし |
| プリマスジン | 土地の名を冠した呼び名 | イギリス南西部プリマスでつくられるもの | 名乗る銘柄なし(Plymouth Ginは収録・型は不明) |
| ジュネヴァ | 地理的表示。最低度数30% | 麦芽由来の蒸溜酒(モルトワイン)を使う | STILLDAMジンの1本 |
| シュタインヘーガー | 地理的表示。最低度数38% | ドイツのシュタインハーゲン村だけでつくる | 収録なし |
| コンパウンドジン | 蒸溜を経ない | 出来上がったスピリッツに漬け込む・混ぜる | BATH LAB GINなど3本 |
「図譜で名乗る銘柄」は、公式サイトに型の記載を確認できたものだけを数えています。本数の内訳は次の節で見ます。
ロンドンドライジンとは|産地の呼び名ではない
いちばん誤解されやすいのがロンドンドライです。ロンドンでつくる必要はありません。EUの規則(Regulation (EU) 2019/787)が定めているのは製法の条件で、主なものは次の3点です。
- 香りは再蒸溜のときにだけ、天然の植物から移す(できあがった液体に香料を足さない)
- 蒸溜後に甘味を足さない(ごく微量の例外を除く)
- 着色しない。水以外のものを後から加えない
つまり「ロンドンドライ」は、後から手を加えないことの約束です。「辛口の味」を意味する言葉ではありません。この条件を満たせば日本でつくってもロンドンドライを名乗れるため、図譜のなかにも静岡県のSTANDARD CRAFT GIN、東京都のトーキョーハチオウジン CLASSICのように、国産でロンドンドライジンを名乗る銘柄があります。
ドライジンとロンドンドライジンの違い
「ドライジン」のほうは規則上の定義がなく、甘味を加えていないジンをまとめて指す言い方です。ロンドンドライは、そのドライジンのなかで製法の条件まで満たしたもの、という関係になります。ドライジンと書かれた銘柄がロンドンドライの条件を満たしていることもありますが、ラベルの表記だけでは判断できません。
オールドトムジンとは|甘味を加えた古い型
オールドトムジンは、18〜19世紀のイギリスで飲まれていた、糖分を加えたジンを指します。規則上の定義はなく、現在は当時の型を復刻したものとして各社が出しています。蒸溜後に甘味を足すため、ロンドンドライの条件は満たしません。この型が生まれた背景はジンの発祥と歴史で追っています。
プリマスジンとは|土地の名を冠した型
プリマスジンは、イギリス南西部の港町プリマスの名を冠した呼び名です。製法の条件ではなく土地の名なので、型というより産地の呼び名に近い性格です。図譜ではプリマスのPlymouth Ginを収録していますが、公式サイトから型の記載を確認できていないため、型の欄は「不明」としています。
ジュネヴァとニューウエスタン
ジュネヴァ(ジェネヴァ、イェネーフェル)は、オランダとベルギーを中心とする地域の名を冠した地理的表示で、ジンの原型にあたる酒です。麦芽由来の蒸溜酒を使う点がジンと異なり、最低度数も30%とジンの37.5%より低く定められています。図譜では、オランダから蒸溜器を導入した佐賀県のSTILLDAMジン スタンダードが「ジュネバタイプ」として唯一この呼び名を使っています。
ニューウエスタン(コンテンポラリー)という言い方もありますが、これも規則上の定義はなく、ジュニパー以外のボタニカルを前に出した設計を指す通称です。
シュタインヘーガーとは|ドイツの村の名を冠した型
シュタインヘーガーは、ドイツ北西部ヴェストファーレン地方のシュタインハーゲン村の名を冠した地理的表示です。EUの規則で保護されていて、この村でつくられたものしか名乗れません。
ほかの型との違いは、ジュニパーの使い方にあります。乾燥したジュニパーの実を砕いて水と酵母を加え、実そのものを発酵させてから蒸溜した液(ヴァホルダールッター)を、穀物由来のスピリッツと合わせてつくります。香り付けに使えるのはジュニパーだけで、漬け込みではなく蒸溜で香りを移すことが条件です。最低度数は38%と定められています。
日本ではジンの種類の一覧に並ぶことの多い名前ですが、杜松の図譜110銘柄には、この型を名乗る銘柄はまだ収録していません。
スロージンは型ではない
名前にジンが付いていても型にあたらないものに、スロージンがあります。スロー(西洋スモモの一種)の実をジンに漬け込み、甘味を加えたリキュールです。EUの規則でもジンとは別の区分で、最低度数は25%と、ジンの37.5%より低く定められています。図譜ではジンとして扱わず、収録していません。
図譜110銘柄のうち、型を名乗るのは28本
ここからが、上の分類を実際の銘柄に当てはめたときの姿です。杜松の図譜では国産クラフトジンと大手・海外の定番を同じ軸で記録しています。収録した110銘柄の公式サイトを当たったところ、型(スタイル)の記載を確認できたのは28本でした。残る82本は、公式に型の記載が見つからないため図譜でも空欄にしています。
| 公式が名乗る型 | 本数 | うち国産 | うち海外 |
|---|---|---|---|
| ロンドンドライ系 | 13本 | 2本 | 11本 |
| ドライジン | 6本 | 5本 | 1本 |
| コンパウンドジン | 3本 | 3本 | 0本 |
| 「ジン」「プレミアムジン」とだけ | 3本 | 3本 | 0本 |
| 独自の型名(京都ドライジン) | 1本 | 1本 | 0本 |
| ジュネヴァタイプ | 1本 | 1本 | 0本 |
| スピリッツ | 1本 | 1本 | 0本 |
| 記載を確認できず | 82本 | 66本 | 16本 |
| 合計 | 110本 | 82本 | 28本 |
読み取れることが3つあります。
ひとつ。ロンドンドライは海外銘柄の呼び名として使われています。 13本のうち11本が海外で、Beefeater London Dry Gin、Tanqueray London Dry Gin、Gordon’s London Dry Gin、Sipsmith London Dry Ginのように、そもそも商品名に型が入っている銘柄が並びます。国産でこの型を名乗るのは前述の2本だけでした。
ふたつ。オールドトム、プリマス、シュタインヘーガーを名乗る銘柄は、この110本のなかにありません。 イギリス南西部のPlymouth Ginは図譜に収録していますが、公式サイトから型の記載を確認できなかったため「不明」として扱っています。よく5大スタイルとして並べられる型のうち、日本の売り場でラベルの言葉として出会う機会が多いのはロンドンドライとドライで、残りは名前を知っていても実物に当たりにくい、というのがこの母集団の姿です。
みっつ。国産クラフトジン79銘柄のうち、型を名乗るのは16本です。 5本に1本にあたります。国産の場合、型を名乗らずに産地とボタニカルを前に出す設計が主流だと分かります。
型ごとの度数も見ておきます。ロンドンドライ系13本のうち度数の記載がある7本は平均42.7%(40.0〜45.0%)、ドライジン表記6本は平均45.8%(45.0〜47.0%)でした。ただしこの差は型そのものより、ロンドンドライ表記の多くが海外銘柄、ドライジン表記の多くが国産であることの反映です。国産と海外の度数の偏りはジンの度数で母数を分けて見ています。
国で分ける|イギリスはロンドンドライ、日本は産地とボタニカル
「ジンの種類」を国ごとに知りたい場合も、型と同じく数えてみると傾向がはっきりします。図譜の110銘柄は9か国にまたがっていて、内訳は次のとおりです。
| 国 | 本数 | うち型を名乗る銘柄 | 主な型 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 82本 | 16本 | ドライジン5本、コンパウンド3本、ロンドンドライ2本ほか |
| イギリス | 19本 | 12本 | ロンドンドライ系11本、ドライジン1本 |
| アメリカ・スペイン | 各2本 | 0本 | — |
| イタリア・オランダ・フランス・オーストラリア・フィリピン | 各1本 | 0本 | — |
イギリスのジン
イギリスの19本のうち11本がロンドンドライ系を名乗っていて、図譜のロンドンドライ系13本の大半がここに集まります。ロンドンドライは産地の縛りのない製法の条件ですが、実際にこの呼び名を商品名にまで入れているのはイギリスの銘柄が中心です。
ジャパニーズジンの定義|型ではなく呼び名
日本の82本(国産クラフト79本と大手3本)は39都道府県に分かれ、型を名乗るのは16本、5本に1本です。多くの銘柄は型の代わりに、産地の素材や焼酎・米の酒といった土台を前に出しています。
「ジャパニーズジン」という言葉は型の名前ではありません。日本でつくられ、日本の素材や土台の酒を使ったジンを指す呼び名で、ジャパニーズウイスキーのような業界の表示基準は、2026年9月時点で同じ性格のものの公表を確認できていません。どこまでを「ジャパニーズ」と呼ぶかは銘柄ごとに異なります。定義の有無と国産82銘柄の中身はジャパニーズジンとはで詳しく見ています。
その他の国
アメリカ、スペイン、イタリアなどの銘柄は、図譜ではいずれも公式に型の記載を確認できていません。国ごとに決まった型があるわけではなく、ロンドンドライのような製法の条件と、ジュネヴァのような土地の名が、国をまたいで使われていると考えると整理しやすくなります。
つくりで分ける|蒸溜ジンとコンパウンドジン
型の区分の土台にあるのが、香りの移し方です。EUの規則は、ここを3段階に分けています。
- ジン — 農産物由来のアルコールにジュニパーの香りを付けたもの。香料を使ってもよい
- 蒸溜ジン(ディスティルドジン) — ジュニパーなどの植物と一緒に再蒸溜してつくったもの
- ロンドンジン — 蒸溜ジンのうち、蒸溜後に甘味も着色も足さないもの
下にいくほど条件が厳しくなる入れ子の関係です。市販のジンの多くは蒸溜ジンにあたります。
左が蒸溜、右が漬け込み。同じボタニカルでも、どちらを通るかで名乗れる型が変わります。(AIで生成したイメージです)
これに対してコンパウンドジンは、蒸溜を経ずにつくります。できあがったスピリッツにボタニカルを漬け込む、あるいは香りの成分を混ぜ合わせる方法です。蒸溜設備がなくてもつくれる代わりに、規則の上では「蒸溜ジン」を名乗れません。
図譜のなかでコンパウンドジンを名乗るのは3本で、いずれも国産でした。
| 銘柄 | 産地 | 公式が挙げるボタニカル |
|---|---|---|
| 9148 #0210 Fukinotou Compound Gin | 北海道 | ふきのとう、ジュニパーベリー |
| AKITA CRAFT GIN 岑 №65 | 秋田県 | クロモジ |
| BATH LAB GIN | 東京都 | ジュニパーベリー |
3本とも、地域の植物を1〜2種だけ前に出した構成です。熱をかけずに香りを移せるため、蒸溜では失われやすい素材を扱うときに選ばれる方法でもあります。5大スタイルの一覧には入らない型ですが、国産の売り場では、オールドトムやプリマスよりこちらに出会う機会のほうが多いことになります。
ボタニカルを蒸溜器のどこに入れるか(浸漬と蒸気抽出)といった、蒸溜のなかでの分かれ方はジンの原料とボタニカルにまとめています。
ベースの酒で分ける|国産では焼酎が3分の2
型でもつくりでもない、もうひとつの軸が土台の酒です。一般には穀物や糖蜜からつくる中性のスピリッツが使われますが、国産クラフトジンではここが分かれます。
土台になる蒸溜酒の原料。国産では米が中心になります。(AIで生成したイメージです)
図譜で公式にベースの記載を確認できたのは110銘柄中26本、そのうち国産は24本です。この24本の内訳は次のとおりでした。
| ベースの酒 | 本数 |
|---|---|
| 焼酎・泡盛(米焼酎・麦焼酎・粕取焼酎を含む) | 16本 |
| 米(焼酎以外) | 5本 |
| 醸造アルコール・国産スピリッツ | 3本 |
国産24本の3分の2が焼酎系です。焼酎蔵や日本酒蔵が持っている設備と原料がそのまま土台になるためで、OSUZU GIN(宮崎県・焼酎)、COMMON(東京都・麦焼酎)、ORI-GiN 1848(沖縄県・泡盛)のように、産地の酒がそのまま出ています。ベースそのものの成り立ちはジンの原料とボタニカルで詳しく見ています。
ただし、この軸で全銘柄を比べることはできません。ベースを公式に書いている銘柄が110本中26本しかないからです。分類の軸として使えるかどうかは、その情報がどれだけ公開されているかに左右されます。
ボタニカルの系統で分ける|柑橘・スパイス・茶・木と葉・ハーブ・花
公開されている情報がいちばん多いのが、ボタニカルです。図譜110銘柄のうち87本が公式にボタニカルを挙げています。1銘柄あたりの数は平均5.4種、中央値4種で、1種だけの銘柄が14本、いちばん多いのは新潟県のTHE HERBALIST YASO GINの20種でした。
ボタニカルを挙げている国産クラフト63銘柄のうち、柚子・山椒・緑茶・クロモジ・紫蘇・檜・桜といった和の素材を含むのが29銘柄です。半分弱ということになります。残りは、ジュニパーに柑橘とスパイスを合わせる古典的な構成か、公式が挙げる素材が少なく構成を判断できないものです。
| 素材 | 国産クラフト63銘柄での出現 |
|---|---|
| レモン | 21銘柄 |
| 柚子 | 16銘柄 |
| 山椒 | 15銘柄 |
| 生姜 | 10銘柄 |
| クロモジ | 7銘柄 |
| 緑茶 | 7銘柄 |
「和のジン」とひとくくりにされがちですが、実際には和の素材を使っていない国産銘柄も同じくらいあります。銘柄ごとの構成は柚子を使う銘柄、山椒を使う銘柄のように素材から辿れます。
6つの系統で数える
ジュニパーのほかに何を合わせているかを、素材の系統でまとめると、ジンの種類はもう一段見分けやすくなります。図譜でボタニカルの記載がある87銘柄について、公式が挙げる素材を6つの系統に振り分けて数えました。1銘柄が複数の系統にまたがる場合は、それぞれに数えています。
ボタニカルの6つの系統。左上から柑橘、スパイス、茶、木と葉、ハーブ、花。(AIで生成したイメージです)
| 系統 | 主な素材 | 87銘柄での数 | うち国産 |
|---|---|---|---|
| 柑橘 | 柚子・レモン・オレンジピール | 54銘柄 | 43銘柄 |
| スパイス | コリアンダー・山椒・生姜 | 47銘柄 | 33銘柄 |
| 木と葉 | クロモジ・檜・杉・笹 | 21銘柄 | 21銘柄 |
| 茶 | 緑茶・玉露・ほうじ茶 | 20銘柄 | 20銘柄 |
| ハーブ | 紫蘇・レモングラス・ミント | 19銘柄 | 16銘柄 |
| 花 | 桜・ラベンダー・エルダーフラワー | 18銘柄 | 12銘柄 |
柑橘とスパイスは、国産と海外を問わず多くの銘柄が挙げる系統です。古典的なロンドンドライも、ジュニパーにレモンやオレンジの皮、コリアンダーを合わせる構成が中心でした。
はっきり分かれたのは、木と葉、茶の2系統です。図譜では国産の銘柄にしか現れません。クロモジ(石川県の森のジンなど)、杉と檜(和歌山県の香立-KODACHI-など)、玉露や煎茶(大阪府のROKU〈六〉、京都府の季の美 京都ドライジンなど)がその例です。国産クラフトジンを海外の定番と見比べるときは、この2系統が入っているかどうかが分かれ目になります。
花の系統は、海外ではHendrick’s Ginのバラとエルダーフラワー、国産ではROKU〈六〉の桜花と桜葉のように、どちらにも見られます。
一方、どの系統にも入らなかった銘柄も17本ありました。ジュニパーと根の素材だけを挙げる銘柄や、昆布・椎茸のような系統に収まらない素材を使う銘柄です。系統はあくまで公式が挙げる素材の分類で、香りの強さや味わいの順位を示すものではありません。
なお、ジュニパーを公式のボタニカル一覧に明記しているのは87本中69本です。ジンである以上どの銘柄にも入っていますが、当たり前のものとして書かれない場合があります。図譜では、公式に記載のあるものだけを載せています。
種類で飲み方は変わるか|公式がすすめる飲み方を44銘柄で数える
種類の違いは、1杯目をどう飲むかにもつながります。図譜110銘柄のうち、公式サイトで飲み方を挙げているのは44本でした。挙げられた飲み方を6つにまとめて数えると、次のようになります。1銘柄が複数の飲み方を挙げている場合は、それぞれに数えています。
海外の13銘柄は、すべてがトニックで割る飲み方を挙げています。 そのうえでBeefeater、Hayman’s、Boodles、The Botanist、オーストラリアのFour Pillars Rare Dry Ginの5本がマティーニを並べていて、ロックやストレートを挙げる銘柄はありませんでした。
国産の31銘柄では、ソーダで割る飲み方(21銘柄)がトニック(18銘柄)を上回ります。 ロックが12銘柄、ストレートが7銘柄あり、鹿児島県のWABIGINや長崎県のGOTOGIN the originのように、割らずに飲む方法から挙げる銘柄も目立ちます。お湯割りはトーキョーハチオウジン CLASSICとGOTOGIN the origin、そば湯割りは北海道の9148 #0210 Fukinotou Compound Ginで、焼酎や日本酒の飲み方に近いものが国産にだけ現れます。
型で見ると、ロンドンドライ系で飲み方を挙げる7本のうち6本がトニックで、残る1本は国産のトーキョーハチオウジン CLASSIC(ソーダ割りとお湯割り)でした。同じロンドンドライを名乗っていても、国産の銘柄は国産らしい飲み方を挙げています。飲み方は型よりも、どの国でつくられたかで分かれるというのが、この44本から見える姿です。
ジントニックは、型と国を問わずもっとも多くの銘柄が公式に挙げる飲み方です。初めての1本をどう飲むか迷ったときの目安になります。国産の銘柄なら、公式がソーダ割りやロックを挙げていることも多いので、銘柄のページで公式の飲み方を確かめてから選ぶと迷いません。割り材ごとの比率はジンの割り方にまとめています。
クラフトジンは型ではない|どの軸で選ぶか
最後に、いちばん混ざりやすい言葉を置き直しておきます。クラフトジンは型(スタイル)ではありません。小規模な蒸溜所が独自の素材でつくるジンを指す通称で、製法の決まりはなく、ロンドンドライを名乗るクラフトジンもコンパウンドのクラフトジンもあります。ジャパニーズジンも型ではなく、日本でつくられたジンを指す呼び名です(ジャパニーズジンとは)。クラフトジンという言葉の整理はクラフトジンとはにまとめています。
では何で選ぶか。3つの軸のうち、どれだけの銘柄を実際に比べられるかを並べると、こうなります。
| 分ける軸 | 公式に記載を確認できた銘柄 | 110本に対する割合 |
|---|---|---|
| 型(スタイル) | 28本 | 25% |
| ベースの酒 | 26本 | 24% |
| ボタニカル | 87本 | 79% |
型で選ぼうとすると、4本に3本は比べる手がかりがありません。国産クラフトジンを見比べるなら、ボタニカルの構成から入るほうが確実だということになります。型は、ロンドンドライのように製法の約束が明確なものに限って、後から加えられていないことの目印として使うのが実際的です。
図譜では、度数・ボタニカル・ベーススピリッツ・産地を全銘柄で同じ位置に並べています。図譜の一覧から1本ずつ見るほか、産地・ボタニカル・飲み方から探すで横断して辿れます。割って飲むときの比率の決め方はジントニックの作り方にまとめました。
よくある質問
ジンの種類はいくつありますか?
型(スタイル)としてよく挙がるのは、ロンドンドライ、ドライ、オールドトム、プリマス、ジュネヴァ、シュタインヘーガー、コンパウンドの7つです。ただしこのうち製法や産地の決まりが規則で定められているのはロンドンドライ、ジュネヴァ、シュタインヘーガーで、ほかは通称か土地の名です。杜松の図譜に収録した110銘柄では、公式サイトで型の記載を確認できたのが28本、そのうちロンドンドライ系が13本、ドライジンが6本、コンパウンドジンが3本でした。オールドトム、プリマス、シュタインヘーガーを名乗る銘柄はこの110本のなかにはありません。
ジンの種類はラベルのどこを見れば分かりますか?
表ラベルの英語表記や商品名を見ます。「LONDON DRY GIN」なら蒸溜後に甘味や着色を足していないこと、「DISTILLED GIN」なら再蒸溜でつくったこと、「OLD TOM GIN」なら甘味を加えた型であることが分かります。裏ラベルの品目は酒税法上「スピリッツ」で、ジンという品目はありません。型の表記がない銘柄も多く、図譜の110銘柄では82本が公式に型を記載していませんでした。
シュタインヘーガーとはどんなジンですか?
ドイツ北西部のシュタインハーゲン村の名を冠した、EUの地理的表示で保護された型です。この村でつくられたものだけが名乗れます。ジュニパーの実そのものを発酵させてから蒸溜した液を、穀物由来のスピリッツと合わせてつくるのが特徴で、香り付けに使えるのはジュニパーだけ、最低度数は38%と定められています。杜松の図譜110銘柄には、この型を名乗る銘柄はまだ収録していません。
スロージンはジンの種類のひとつですか?
型ではありません。スロー(西洋スモモの一種)の実をジンに漬け込み、甘味を加えたリキュールで、EUの規則でもジンとは別の区分になっています。最低度数も25%と、ジンの37.5%より低く定められています。
ドライジンとロンドンドライジンは何が違いますか?
ドライジンは規則上の定義がなく、甘味を加えていないジンをまとめて指す言い方です。ロンドンドライジンはEUの規則に条件があり、香りを再蒸溜のときにだけ天然の植物から移すこと、蒸溜後に甘味や着色を加えないこと、水以外を後から足さないことが求められます。ロンドンドライはドライジンの一部、という関係になります。ラベルに「ドライジン」とだけある銘柄がこの条件を満たしているかどうかは、表記だけでは分かりません。
ロンドンドライジンはロンドンでつくられているのですか?
いいえ。ロンドンドライは産地の呼び名ではなく製法の条件なので、条件を満たせばどこでつくっても名乗れます。図譜のなかでも、静岡県のSTANDARD CRAFT GINと東京都のトーキョーハチオウジン CLASSICが国産のロンドンドライジンとして収録されています。同じ型の13本のうち11本が海外銘柄なので海外の呼び名という印象になりますが、地理的な制限はありません。
オールドトムジンとはどんなジンですか?
18〜19世紀のイギリスで飲まれていた、糖分を加えたジンを指します。規則上の定義はなく、現在は当時の型を復刻したものとして出されています。蒸溜後に甘味を足すため、ロンドンドライの条件は満たしません。杜松の図譜に収録した110銘柄のなかには、公式にオールドトムを名乗る銘柄はありませんでした。
ジンの種類は国ごとに違いますか?
国ごとに決まった型があるわけではありません。ただ傾向ははっきりしていて、図譜のイギリスの19銘柄では11本がロンドンドライ系を名乗る一方、日本の82銘柄で型を名乗るのは16本で、多くは産地の素材や焼酎・米の酒といった土台を前に出しています。アメリカやスペインなどの銘柄は、図譜ではいずれも公式に型の記載を確認できていません。
コンパウンドジンとはどんなジンですか?
蒸溜を経ずに、できあがったスピリッツにボタニカルを漬け込む、あるいは香りの成分を混ぜ合わせてつくるジンです。EUの規則では「蒸溜ジン」を名乗れませんが、ジンには該当します。熱をかけないため、蒸溜では失われやすい素材を扱えるのが特徴です。図譜では9148 #0210 Fukinotou Compound Gin(北海道)、AKITA CRAFT GIN 岑 №65(秋田県)、BATH LAB GIN(東京都)の3本がこの型を名乗っていて、いずれも地域の植物を1〜2種だけ前に出した構成です。
クラフトジンは種類のひとつですか?
型(スタイル)ではありません。小規模な蒸溜所が地域の素材や独自のボタニカルでつくるジンを指す通称で、製法の決まりはありません。そのためロンドンドライを名乗るクラフトジンもあれば、コンパウンドジンのクラフトジンもあります。ジャパニーズジンも型ではなく、日本でつくられ、日本の素材や土台の酒を使ったジンを指す呼び名です。ジャパニーズウイスキーのような表示基準は、2026年9月時点で同じ性格のものの公表を確認できていません。
ジンの香りの系統にはどんな種類がありますか?
公式が挙げるボタニカルを系統で分けると、柑橘、スパイス、木と葉、茶、ハーブ、花の6つにおおむね収まります。図譜でボタニカルの記載がある87銘柄では、柑橘を含むのが54銘柄、スパイスが47銘柄と多く、木と葉(21銘柄)と茶(20銘柄)は国産の銘柄にだけ見られました。系統は使われている素材の分類で、味わいの優劣を示すものではありません。
国産クラフトジンはどう見分ければよいですか?
ボタニカルの構成から入るのが確実です。図譜110銘柄のうち、型の記載があるのは28本、ベースの酒の記載があるのは26本ですが、ボタニカルは87本が公式に挙げています。国産クラフト63銘柄のうち柚子・山椒・緑茶・クロモジなど和の素材を含むのが29銘柄で、残りは古典的な構成か記載が少ない銘柄です。ベースの記載がある国産24本では、3分の2にあたる16本が焼酎や泡盛を土台にしていました。
ジンの種類によって飲み方は違いますか?
型よりも、どの国の銘柄かで違いが出ます。図譜で公式に飲み方を挙げている44銘柄のうち、海外の13銘柄はすべてがトニックで割る飲み方を挙げ、5本がマティーニを並べていました。国産の31銘柄では、ソーダで割る飲み方が21銘柄とトニックの18銘柄を上回り、ロック(12銘柄)やストレート(7銘柄)、お湯割り・そば湯割りを挙げる銘柄もあります。型と国を問わず多いのはジントニックです。