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ジンの原料・材料|ボタニカル(ハーブ)・ベースの酒・水を110銘柄の公式記載から

ジュニパーの枝と球果を主役に、柚子・山椒・コリアンダーを部位ごとに添えた図譜風のイメージ
AIで生成したイメージです
この記事の結論

ジンは、穀物などからつくった蒸溜酒(ベーススピリッツ)に、ジュニパーベリーを中心とする植物(ボタニカル)の香りを移して再蒸溜し、水で度数を整えた酒です。原料はこの3つで、決まりがあるのはジュニパーベリー(杜松の実)が香りの主役であることだけ。残りは銘柄の自由です。図譜に収録した110銘柄の公式記載を数えると、国産クラフト63銘柄では柚子19・山椒15・緑茶13が、海外の定番22銘柄ではコリアンダー10・アンジェリカ7が上位に並び、公式が挙げるボタニカルの数は1種から20種まで開きます。

ジンの原料は、大麦・小麦・トウモロコシなどの穀物からつくった蒸溜酒(ベーススピリッツ)に、ジュニパーベリーを中心とする植物(ボタニカル)、そして水です。蒸溜酒に植物の香りを移してもう一度蒸溜し、水で度数を整えると、ジンになります。国産のクラフトジンでは、この土台の蒸溜酒に米や焼酎を使う銘柄も多くあります。

この記事では、3つの原料それぞれの役割から、ジュニパーベリーとは何の実なのか、定番のボタニカルには何があるのか、国産クラフトジンで実際によく使われている植物は何か、瓶のラベルの「原材料名」から原料をどう読み取るか、そして原料がどの工程で酒になるのかまでを順に見ていきます。ジンという酒そのものの定義はジンとはに、クラフトジンという言葉の整理はクラフトジンとはにまとめています。

ジンの原料は3つ|ボタニカル・ベーススピリッツ・水

ジンの原料は、役割の違う3つに分けて考えると整理できます。式にすると、次のとおりです。

ベーススピリッツ + ジュニパーベリー + ほかのボタニカル →(再蒸溜)→ 水で度数を整える = ジン

原料何か決まりはあるか
ベーススピリッツ穀物(大麦・小麦・トウモロコシ・ライ麦)が中心。米・焼酎・糖蜜・ブドウ・ジャガイモの例も原料は問われない
ジュニパーベリーセイヨウネズの球果(杜松の実)香りの主役であることが唯一の条件
ほかのボタニカルハーブ・スパイス・果皮・根・茶葉など種類も数も自由。銘柄の個性はほぼここ
水仕込み水・割り水瓶詰めの度数まで下げる。産地の水を使う銘柄がある

つくり方は、ベーススピリッツにボタニカルの香りを移し、もう一度蒸溜して、最後に水で度数を整える、というのが基本です。ワインやビールのように原料そのものが液体になるのではなく、植物の香りだけを取り出して酒に移すのがジンの特徴です。だからジンの「原料」を語るときは、ほとんどの場合ボタニカルの話になります。

ボタニカル(botanical)は日本語にすると「植物性の香味原料」で、ジンの世界ではハーブ・スパイス・果皮・木の枝葉をまとめてこう呼びます。当サイトが銘柄ページのデータ欄に必ずボタニカルを並べているのも、ここが銘柄の設計図そのものだからです。

ジュニパーベリー(杜松の実)|ジンをジンにする唯一の必須原料

ジュニパーの小枝と、緑の若い球果・青黒く熟した球果・針状の葉を部位ごとに描いた植物図 セイヨウネズの枝と球果。緑から青黒へ、熟すまでに2年ほどかかります(AIで生成したイメージです)

ジンの原料のなかで、ただ一つ欠かせないのがジュニパーベリーです。ジンという名前を使うには、ジュニパーベリーの香りが主であることが条件になっていて、EUの規則ではこれに加えてアルコール分37.5%以上と定められています。逆に言えば、ジュニパーさえ主役なら、他に何を入れても構いません。ジンの銘柄がこれほど多彩なのは、この一点だけが決まっているからです。

ジュニパーベリーは、ヒノキ科ビャクシン属のセイヨウネズ(Juniperus communis)という針葉樹が付けるものです。名前に「ベリー」とありますが、植物としては果実ではなく球果、つまり松ぼっくりの仲間にあたります。鱗片が肉厚に育って融合し、丸い粒のように見えているだけです。

  • 熟すのに時間がかかる — 緑色の若い球果が青黒く熟すまでに2年ほどかかり、同じ枝に熟度の違う粒が同居します
  • 香り — 針葉樹らしい樹脂の香りに、柑橘や胡椒を思わせる要素が混ざります
  • 和名は杜松(としょう・ねず) — 日本にはネズミサシ(ネズ)が自生します。当サイトの名前もこの和名から取りました

もとは17世紀のオランダで薬酒としてつくられた酒が、イギリスに渡って今のジンになったと言われています。ジンという名の由来も、ジュニパーを指すオランダ語・フランス語の言葉が縮まったものです。ジュニパーを使う銘柄はジュニパーベリーを使う国産クラフトジンから辿れます。

定番のボタニカル|実際に何が使われているか

ジュニパー以外のボタニカルは自由ですが、「定番」と呼べる顔ぶれはあります。どれも香りのなかで別々の仕事をしています。

ボタニカル使う部位香りの方向
コリアンダーシード種子柑橘と甘いスパイスの中間。ジュニパーの次によく使われる
アンジェリカルート根土や麝香のような重み。香りをまとめる役
オリスルート根(アヤメ)粉のような甘さ。香りを長持ちさせる役
レモン・オレンジの果皮果皮立ち上がりの明るさ
カルダモン・シナモン種子・樹皮甘く温かいスパイス
リコリス(甘草)根丸みのある甘さ

ジンの材料として「ハーブ」と呼ばれるものも、ジンの世界ではすべてボタニカルに含めます。葉や花のハーブ、種子や樹皮のスパイス、柑橘の皮、木の枝葉まで、香りを移すために使う植物をひとまとめにした呼び名です。

では、実際の銘柄ではどれくらい使われているのでしょうか。図譜に収録している110銘柄のうち、公式サイトがボタニカル名を挙げている87銘柄(国産クラフト63・海外定番22・国産大手2)を数えると、こうなりました。

表のボタニカル名からは、その材料を使う銘柄の一覧に移れます(一覧は名前の表記が一致するものだけを集めているため、件数は表と少し異なります)。

ジュニパーベリーが全銘柄に並んでいないのは、公式サイトが「ジュニパー以外の特徴的なボタニカル」だけを挙げている場合があるためです。ジンである以上、どの銘柄もジュニパーは使っています。

この表で目を引くのは、海外定番と国産クラフトで骨格の作り方が違うことです。海外の定番は22銘柄中10銘柄にコリアンダー、7銘柄にアンジェリカが入り、古典的なロンドン・ドライの組み立てがそのまま残っています。国産クラフトでは同じ位置を柚子・山椒・緑茶が占めていて、コリアンダーの比率は4分の1ほどです。

何種類使うのか|公式が挙げる数は1種から20種まで

ボタニカルの本数にも決まりはありません。同じ87銘柄について、公式が名前を挙げているボタニカルの数を数えると、国産クラフト・海外定番とも中央値は4種でした。

公式が挙げているボタニカルの数国産クラフト63銘柄海外定番22銘柄
1〜3種268
4〜6種198
7〜10種84
11種以上102

最も多いのは新潟のTHE HERBALIST YASO GINで20種、海外ではCitadelle Original(フランス)の19種です。逆に、公式が挙げている素材名が1つだけの国産クラフトも11本あります。

ただしこの数字は「公式が名前を書いている数」であって、使用本数そのものではありません。全種類を公開している蒸溜所もあれば、配合を伏せて特徴的な数種だけを挙げる蒸溜所もあります。

和のボタニカル|柚子・山椒・緑茶・クロモジ

柚子の実と葉、山椒の小葉と実、茶の葉、クロモジの枝を四つに分けて描いた図譜 国産クラフトジンで出番の多い4種。柚子・山椒・茶・クロモジ(AIで生成したイメージです)

国産クラフトジンで最もよく使われるボタニカルは、ジュニパーを別にすれば柚子です。63銘柄中19銘柄が使っていて、海外定番には1本もありません。皮に含まれる香りが蒸溜で立ちやすく、和の素材のなかでは扱いの歴史も長い植物です。

山椒は15銘柄。ミカン科サンショウの実で、痺れるような刺激と青い柑橘の香りを併せ持ちます。ジンのボタニカルとしては胡椒やグレインズ・オブ・パラダイスに近い位置に置かれます。

緑茶は13銘柄で、煎茶・玉露・抹茶・ほうじ茶と茶葉の種類まで公式が書き分けている銘柄もあります。京都の季の美 京都ドライジンは玉露を、兵庫の東経135度兵庫ドライジンは煎茶を公式に挙げています。

クロモジは7銘柄。クスノキ科の落葉低木で、和菓子の楊枝の材料として知られる木です。枝葉に含まれる香りが目的で、海外定番には登場しません。

このほか、檜・杉・赤松といった針葉樹(7銘柄)や紫蘇(6銘柄)も定番になりつつあります。北海道の9148 #0101 Craft Gin standardは日高昆布と干し椎茸を、佐賀のSTILLDAMジン スタンダードは海苔とごまを公式に挙げていて、「その土地にあるもの」をそのままボタニカルにする発想が広がっています。素材から銘柄を探すならボタニカルから探すが使えます。

ジンという酒そのものの定義から知るならクラフトジンとは何か、ジャパニーズジンの表示基準、銘柄を選ぶときにデータ欄のどこを見るか。言葉の整理はこちらにまとめています。
クラフトジンとはを読む →

ベーススピリッツ|米や焼酎からもできる

ボタニカルの下にある土台が、ベーススピリッツです。一般には穀物(大麦・小麦・トウモロコシ・ライ麦)や糖蜜を発酵させ、連続式蒸溜機でアルコール分96%以上まで高めたニュートラルスピリッツが使われます。「ニュートラル」とは、原料の風味をほとんど残さない状態まで純度を上げたもの、という意味です。

ところが国産クラフトジンでは、ここに日本の蒸溜酒が入ってきます。図譜のなかで公式がベースを明記している国産クラフト24銘柄のうち、21銘柄が米・焼酎・泡盛など日本の蒸溜酒を土台にしています。

ベース銘柄の例
米季の美 京都ドライジン(京都府)、橘花ジン(奈良県)
焼酎OSUZU GIN(宮崎県)、COMMON(東京都・麦焼酎)
酒粕・粕取り焼酎LAST ELEGANT(東京都)
泡盛ORI-GiN 1848(沖縄県)

これには理由があります。国産クラフトジンの多くは、焼酎蔵・日本酒蔵・ウイスキー蒸溜所が新しく始めたものです。すでに持っている設備と原料がそのままベースになるので、自然と米や焼酎が土台になります。ニュートラルスピリッツと違ってベース自体に風味が残るため、ボタニカルと並ぶもう一つの設計要素になっています。

海外のジンでは|穀物が中心、糖蜜やブドウ・ジャガイモの例も

海外の定番銘柄では、土台は穀物(小麦・大麦・トウモロコシ・ライ麦)のニュートラルスピリッツが中心です。そのほかに、糖蜜(サトウキビの搾りかす)からつくるもの、ブドウの蒸溜酒を土台にするもの、ジャガイモからつくるものもあります。オランダの伝統的なジン(ジュネヴァ)は、大麦麦芽・トウモロコシ・ライ麦を発酵させて蒸溜した「モルトワイン」を土台にしていて、穀物の香りが残るのが特徴です。どの原料でもジンを名乗れるのは、ジンの条件が「ジュニパーの香りが主役であること」に置かれていて、土台の原料を問わないからです。

一方で、純度を上げたニュートラルスピリッツは原料の風味がほとんど残らないため、海外の定番では原料の違いより、ボタニカルとその入れ方の違いが銘柄の差になるのが一般的です。同じニュートラルスピリッツはウォッカの土台にもなり、ジュニパーの香りを移すかどうかが分かれ目になります(ジンとウォッカの違い)。土台そのものに風味を残す国産クラフトの設計とは、この点で向きが違います。

焼酎がベースでも焼酎にはならない|酒税法の線引き

焼酎を土台にしたジンは、日本の法律のうえでは焼酎ではなく「スピリッツ」に分類されます。酒税法の焼酎(連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎)の定義には除外の項目があり、そのひとつに「アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの」が挙げられています(酒税法第3条第9号ニ。単式蒸留焼酎の第10号もこれを準用)。

ジンは、蒸溜の段階でジュニパーなどの植物の香りをアルコールに移す酒です。そのため、土台が焼酎や泡盛であっても、ボタニカルを通して蒸溜した時点で焼酎の定義から外れ、どの品目にも当てはまらないエキス分2度未満の酒をまとめた「スピリッツ」(同第20号)に入ります。国産ジンのラベルの品目欄が「焼酎」ではなく「スピリッツ」になっているのはこのためです。日本の法律にジンという品目がないことはジンとはに、ラベルの表示の読み方はジャパニーズジンとはにまとめています。

銘柄ページのデータ欄では、公式に記載があるものだけ「ベーススピリッツ」として載せています。記載が見つからない銘柄は空欄のままにしてあります。ベースの酒を軸にした銘柄の分け方はジンの種類にまとめています。

水|度数を整えるもうひとつの原料

ボタニカルとベーススピリッツで香りの設計が決まったあと、最後に加わるのが水です。再蒸溜を終えた液体はアルコール分が高いままなので、瓶詰めの度数まで水で下げます。この水を仕込み水・割り水と呼びます。原材料名に書かれることはほとんどありませんが、瓶の中身の半分以上を占めるのはこの水です(度数の分布はジンの度数にまとめています)。

国産クラフトジンでは、どこの水を使っているかを公式サイトが書いている銘柄があります。図譜に収録した110銘柄のうち、仕込み水・割り水に触れているのは14銘柄で、その14銘柄すべてが国産クラフトでした。海外定番と国産大手の31銘柄には記載がありません。

銘柄公式が挙げている水
Alembic Dry Gin HACHIBAN(石川県)霊峰白山から流れる地下水を仕込み水と割り水に
季の美 京都ドライジン(京都府)伏見の伏流水
Mairingen Fresh Craft Gin(京都府)丹後半島の超軟水と超硬水の2種類
南部美人クラフトジン(岩手県)折爪馬仙峡伏流水(中硬水)
GOTOGIN the origin(長崎県)蒸溜所の裏山の湧水を椿炭で濾した超軟水
COMMON(東京都)度数調整の割水に奥多摩沢井の湧き水

変わり種もあります。秋田のAKITA CRAFT GIN 岑 №65は、割り水にも秋田県産の白樺樹液を使っていると公式に書いています。

水の記載が国産に偏るのは、日本酒蔵・焼酎蔵が始めた蒸溜所が多く、もともと仕込み水を看板にしてきた文化があるためです。ベーススピリッツと同じで、すでに持っているものがそのままジンの原料になっています。

ラベルの「原材料名」で原料を確かめる

手元の一本が何からできているかは、瓶の裏ラベルや公式サイトの商品情報にある「原材料名」の欄で確かめられます。ただし、酒類は一般の加工食品と違って原材料名の表示を省略できる扱いになっているため、欄そのものがない銘柄もあり、書き方も蒸溜所ごとにまちまちです。図譜に収録した銘柄の公式サイトで原材料名の欄を見比べると、書き方はおおむね2通りに分かれました。

書き方公式サイトの原材料名(例)
土台の酒だけを書くAMRTA GIN(山梨県)「蒸留酒(国内製造)」/【KOBE GIN】YAMA(兵庫県)「スピリッツ(国内製造)」
土台の酒とボタニカルを並べる香立-KODACHI-(和歌山県)「醸造アルコール(国内製造)、スギ、ヒノキ、ジュニパーベリー、温州みかん皮、レモン皮、山椒種」
〃夕凪GIN(香川県)「本格焼酎(米)、ジュニパーベリー、柚子、オリーブ、山椒、生姜、文旦、コリアンダーシード、レモン、クローブ、カシア」
〃Jin40-ASAKURA CRAFT GIN(福岡県)「本格焼酎・レモングラス・ジュニパーベリー・緑茶・ペパーミント」

読むときの手がかりは3つです。

  • 先頭に来るのが土台の酒 — 「スピリッツ」「蒸留酒」「醸造アルコール」「原料用アルコール」は、いずれもベーススピリッツを指す書き方です。「本格焼酎(米)」のように、焼酎の種類や原料まで書く銘柄もあります
  • 「(国内製造)」は土台の酒をつくった場所 — 原料の穀物の産地ではなく、そのアルコールが国内で製造されたことを示す書き方です
  • 土台の酒だけの表記でも、中身が単純とは限らない — AMRTA GIN はラベル表記こそ「蒸留酒(国内製造)」ですが、公式サイトの説明では、山田錦の純米酒を蒸溜したスピリッツを土台にしていると書かれています。原材料名の欄で分からないことは、銘柄の説明文のほうに書かれていることがよくあります

当サイトの銘柄ページでは、原材料名の欄と説明文の両方から、公式に記載のあるベーススピリッツとボタニカルだけをデータ欄に拾っています。

材料から銘柄を探す|ボタニカル別の図譜一覧

「柚子を使ったジンにはどんな銘柄があるのか」と知りたくなったら、材料ごとの一覧から辿れます。いずれも公式サイトがその植物をボタニカルとして挙げている銘柄だけを、図譜の番号順に並べています。

材料の一覧をまとめて眺めるならボタニカルから探すが入口です。同じページから、産地(都道府県)で探すこともできます。

原料が酒になるまで|4つの工程

3つの原料がどの段階で入るのかを、順に追うとこうなります。

左に稲穂と米粒・大麦の穂・小麦の穂を並べ、中央に背の高い連続式蒸溜塔の断面、右に銅製の単式蒸溜器と上部の籠を描いた図 穀物から中性の酒をつくる連続式蒸溜塔と、ボタニカルを通す単式蒸溜器(AIで生成したイメージです)

  1. ベーススピリッツをつくる — 穀物や米を発酵させ、連続式蒸溜機でアルコール分96%以上まで高めます。ここまでは無色で、原料の風味もほとんど残りません。この工程は自社で行わず、できあがったスピリッツを仕入れて次から始める蒸溜所もあります
  2. ボタニカルを入れる — 単式蒸溜器に、ジュニパーを中心とした植物を入れます。入れ方は下の2通りです
  3. もう一度蒸溜する — 香りを移した液体を再蒸溜し、最初と最後に出てくる部分を切り分けて、真ん中の部分だけを取ります。どこで切るかがつくり手の判断になります
  4. 水で度数を整えて瓶詰めする — 40〜47%前後まで水で下げ、濾過して瓶に詰めます

樽で寝かせないのが原則なので、ウイスキーのように樽から香りや色が付くことはありません。瓶に入った時点の香りは、ほぼ2と3で決まっています。どの蒸溜所がどんな設備でこれを行っているかはジンの蒸溜所にまとめています。

浸漬と蒸気抽出|同じ原料でも入れ方で変わる

同じボタニカルでも、どう蒸溜器に入れるかで扱いが変わります。大きく2つの方法があり、多くの銘柄は両方を組み合わせます。

  • 浸漬(スティープ) — ベーススピリッツにボタニカルを漬け込んでから蒸溜します。成分がしっかり出るので、根や樹皮のような硬い素材に向きます
  • 蒸気抽出(ベイパーインフュージョン) — 蒸溜器の上部の籠にボタニカルを吊るし、立ち上る蒸気に香りを通します。熱に弱い花や果皮、茶葉に向きます

さらに、ボタニカルを1種類ずつ別々に蒸溜してから配合する方法もあります。素材ごとに最適な条件で蒸溜できる代わりに、手間と設備が要ります。国産では、柚子や茶のように香りが繊細で熱に弱い素材を扱う必要から、この作り分けが取られることがあります。

つまり、公式サイトのボタニカル一覧が同じでも、入れ方が違えば別の酒になります。データ欄のボタニカルは「何を使ったか」であって「どう出るか」ではない、というのが読むときの前提です。

ボタニカルに合わせた柑橘の選び方はジントニックの作り方に、原料の違いが銘柄の型としてどう呼ばれるかはジンの種類にまとめています。

ジンは何からできているお酒ですか?

ジュニパーベリー(杜松の実)を中心とした植物の香りを、土台になる蒸溜酒に移し、水で度数を整えたお酒です。土台の蒸溜酒は穀物からつくるのが一般的ですが、決まりはなく、国産クラフトジンでは米・焼酎・泡盛を使う銘柄が多く見られます。原料で決まるのではなく、ジュニパーの香りが主役であることで決まるのがジンです。

焼酎を使ったジンは、焼酎の仲間ですか?

法律のうえでは焼酎ではありません。日本の酒税法の焼酎の定義からは、蒸溜する際に発生するアルコールへ他の物品の成分を浸出させたものが除かれています。ボタニカルの香りを蒸溜で移すジンはこれに当たるため、土台が焼酎や泡盛でも品目は「スピリッツ」になります。原料としては焼酎の蔵の設備と酒をそのまま活かしている銘柄が多く、図譜で公式がベースを明記している国産クラフト24銘柄のうち21銘柄が米・焼酎・泡盛など日本の蒸溜酒を土台にしています。

ジンはジャガイモからつくるのですか?

ジャガイモを土台にしたジンもありますが、一般的ではありません。海外では穀物のニュートラルスピリッツが中心で、ジャガイモはウォッカの原料として知られています。ジンは土台の原料を問わないので、ジャガイモでも穀物でも米でもつくれます。

ジンの原料に決まりはありますか?

ジュニパーベリーの香りが主であること、これが唯一の条件です。EUの規則ではアルコール分37.5%以上も定められています。それ以外のボタニカルとベーススピリッツは銘柄の自由で、種類にも本数にも上限はありません。図譜に収録している銘柄では、公式が挙げているボタニカルが1種類だけの銘柄から20種類に及ぶ銘柄まであります。

ジュニパーベリーは果物の一種ですか?

いいえ。見た目は黒い小さな果実ですが、セイヨウネズという針葉樹の球果で、植物としては松ぼっくりの仲間です。鱗片が肉厚に育って融合し、丸い粒の形になっています。緑色の若い球果が青黒く熟すまでに2年ほどかかるため、同じ枝に熟度の違う粒が付いていることも珍しくありません。

「ボタニカル」と「ハーブ・スパイス」は違うものですか?

ジンの世界では、香りづけに使う植物性の原料をまとめてボタニカルと呼びます。ハーブもスパイスも果皮も木の枝葉も、すべてボタニカルに含まれます。使う部位は実・種子・根・樹皮・葉・花とさまざまで、同じ植物でも部位が違えば別のボタニカルとして数えます。コリアンダーは種子を、アンジェリカは根を使う、といった具合です。

ボタニカルは何種類くらい使いますか?

決まりはありません。図譜に収録した銘柄のうち公式がボタニカル名を挙げている87銘柄では、国産クラフト・海外定番とも中央値は4種でした。最も多い銘柄で20種、公式が挙げている素材名が1つだけの銘柄も11本あります。ただしこれは公式が名前を書いている数で、配合を伏せて特徴的な数種だけを挙げる蒸溜所もあります。

ラベルの原材料名にボタニカルが書かれていないのはなぜですか?

酒類は原材料名の表示を省略できる扱いのため、どこまで書くかは蒸溜所の判断になります。「スピリッツ(国内製造)」のように土台の酒だけを書く銘柄もあれば、ジュニパーベリーや柚子・山椒まで並べる銘柄もあります。ボタニカルは、公式サイトの商品説明に別途書かれていることが多いので、あわせて確かめると原料の全体像が見えてきます。

ジンの原料に水は含まれますか?

含まれます。再蒸溜したあとの液体はアルコール分が高いままなので、瓶詰めの度数まで水で下げます。これを仕込み水・割り水と呼びます。原材料名にはほとんど書かれませんが、瓶の中身の半分以上を占めるのは水です。図譜では110銘柄のうち14銘柄の公式サイトが使用する水に触れていて、そのすべてが国産クラフトジンでした。

ベーススピリッツの違いは、飲んだときに分かりますか?

ニュートラルスピリッツは原料の風味がほとんど残らないところまで純度を上げたもので、土台としては中立です。一方、米や焼酎を土台にした銘柄はベース自体に風味が残るため、設計としては別のものになります。ただし当サイトでは、実際に杯を交わした銘柄にだけ味の記述を置いています。飲み方や味わいの記述がある銘柄は、図譜のページでご確認ください。

杜
杜松 編集部国産クラフトジンを1本ずつ図譜にしています。事実は公式の出典から、味は飲んだ人の言葉から。

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