ネグローニの作り方|ジン・カンパリ・ベルモットの割合と、苦さと度数の決まり方

ネグローニは、ジン・カンパリ・スイートベルモットを30mlずつ、氷を入れたグラスに直接注いで混ぜるだけの飲み物です。もとはカンパリとベルモットをソーダで割ったアメリカーノで、そのソーダをジンに置き換えたものなので、ジンは液量の3分の1しか入りません。それでも完成した一杯は45%のジンで約29%になり、ジントニックの3倍近い濃さになります。苦さ・甘さ・強さは3つの比率を1つずつ動かすと別々に調整でき、家で作るときにいちばん効くのは、開栓後のスイートベルモットをどう保存しているかです。
ネグローニは、ジンとカンパリとスイートベルモットを同じ量ずつ、氷を入れたグラスに注いで混ぜる飲み物です。シェイカーもミキシンググラスも要らず、手順だけなら1分で終わります。そのぶん、どこで差がつくのかが分かりにくい一杯でもあります。この記事では、材料と道具、手順、比率の動かし方、完成した一杯が何%になるか、カンパリとベルモットの保存と作り置き、仕上げのオレンジまでを順にまとめます。ほかの飲み方と並べて見たいときはジンのカクテルに一覧があります。
材料と道具|買い足すのはカンパリとベルモットの2本
国際バーテンダー協会(IBA)が示している標準の配合は、ジン30ml・カンパリ30ml・スイートベルモット30mlを、氷を入れて冷やしたオールドファッションドグラスに直接注ぎ、静かに混ぜ、オレンジのスライスを添える、というものです(IBA公式レシピ・2026年9月取得)。
| 材料・道具 | 一杯ぶんの目安 | 補足 |
|---|---|---|
| ジン | 30ml | 度数が完成の強さをほぼ決める |
| カンパリ | 30ml | 苦味と赤い色はここから |
| スイートベルモット | 30ml | 赤(ロッソ)のほう。ドライではない |
| 氷 | グラスいっぱい | 大きめのものが向く |
| ロックグラス | 200〜300ml | 背の低い、口の広いもの |
| バースプーン | 1本 | 箸、柄の細いスプーンで代用可 |
| メジャーカップ | 1個 | 大さじ(15ml)2杯でも量れる |
| オレンジ | 1/8個ぶん | スライスか、皮を細く削いだもの |
ジン以外に買い足すのはカンパリとスイートベルモットの2本だけで、道具は家にあるもので足ります。分量が3つとも同じなので、メジャーカップが無くても大さじ2杯ずつで代用できます。
ベルモットは白ワインに香草を漬け込んだ酒で、辛口の「ドライ(白)」と甘口の「スイート(赤)」があります。マティーニに使うのはドライ、ネグローニに使うのはスイートのほうです。同じ「ベルモット」という名前で棚に並んでいるので、買うときはラベルの色と表記を確かめてください。マティーニの作り方と材料を共通にしたい場合でも、この2本は別に要ります。
カンパリは、ハーブや果皮を漬け込んだ苦味のあるリキュールで、日本で流通しているものは度数25%です。開栓後も常温の棚に置けます。
作り方|氷を入れたグラスで直接混ぜる5つの手順
- グラスを冷やす。 冷凍庫に10分入れるか、氷と水を入れて回し、直前に水だけ捨てます。この一杯は氷を入れたまま飲むので、グラスが温いと最初の一口から溶けはじめます。
- 氷を入れる。 大きめの氷を1〜2個、または製氷機の氷をグラスの口まで。溶ける速さがそのまま味の変わる速さになるので、氷は大きく、隙間を詰めます。
- 3つを注ぐ。 ジン・カンパリ・スイートベルモットを30mlずつ。順番はどれからでも構いません。量を間違えたくなければ、同じメジャーカップで3回続けて量るのがいちばん確実です。
- バースプーンで一回転させる。 スプーンを氷とグラスの内壁の隙間から底まで下ろし、ゆっくり一周させて引き上げます。3つとも似た比重の液体なので、これで混ざります。10回も20回も回すと、氷が削れて水だけが増えます。
- オレンジを添える。 スライスをグラスの縁に掛けるか、皮を細く削いでグラスの上で折り、油を飛ばしてから落とします。
バースプーンは氷を持ち上げず、内壁に沿わせて一回転させます。(AIで生成したイメージです)
この5手順のうち、省くと結果が変わるのは1番と2番です。3つの材料はどれも常温の棚に置いてあることが多いので、冷えていない液体を、少ない氷に注ぐと、混ぜ終わる前に氷が減っています。逆に言えば、材料を冷蔵庫に入れておけば氷の溶ける量を抑えられます。
もとはアメリカーノ|ジンが「割り材の位置」に入っている
ネグローニには、材料の構造を理解しやすくする成り立ちがあります。もとになったのは、カンパリとスイートベルモットを同量合わせてソーダで満たした「アメリカーノ」という飲み物で、そのソーダをジンに置き換えたものがネグローニだと伝えられています(1919年のフィレンツェで、ネグローニ伯爵の注文から生まれたという説が広く知られています)。
ここから2つのことが分かります。
- カンパリとベルモットが同量なのが土台で、ジンは後から入った3つ目の材料です。だからこの2本を替えると土台ごと変わり、ジンを替えると上に乗るものが変わります。
- ジンは割り材の位置に入っているので、液量の3分の1しかありません。ジントニックならジンは4〜5分の1、マティーニなら6分の5と、レシピによってジンの占める割合は大きく違います。ネグローニはそのちょうど中間です。
ジンを別のものに置き換えると名前が変わるのも、この構造が理由です。スパークリングワインに替えると「ネグローニ・スバリアート(間違えたネグローニ)」、バーボンやライウイスキーに替えると「ブールバルディエ」になります。
| 名前 | ジンの位置に入るもの | 45%換算での度数 |
|---|---|---|
| ネグローニ | ジン 30ml | 約29% |
| ネグローニ・スバリアート | スパークリングワイン 30ml | 約17% |
| ブールバルディエ | バーボンなど 30ml | 約29% |
| アメリカーノ | ソーダ 90ml前後 | 約8% |
カンパリとベルモットを一度買ってしまえば、この4つは同じ材料の組み替えで作れます。カンパリとスイートベルモットが余りそうなときの逃げ道としても使えるので、覚えておくと2本を持て余しません。
比率の動かし方|苦さ・甘さ・強さは別々に動かせる
ネグローニは3つの材料がそれぞれ別の役割を持っているので、動かした1つだけが変わります。ここがマティーニ(材料が2つしかない)との違いです。
| 配合 | ジン:カンパリ:ベルモット | 分量の例 | 45%のジンでの度数 |
|---|---|---|---|
| 標準 | 1:1:1 | 30:30:30 | 約29% |
| ジン寄り | 1.5:1:1 | 45:30:30 | 約31% |
| カンパリ控えめ | 1:0.7:1 | 30:20:30 | 約29% |
| ベルモット多め | 1:1:1.5 | 30:30:45 | 約27% |
- 苦味を弱めたい → カンパリを20mlに減らします。液量が減るだけで度数はほぼ変わりません。
- 甘みを増やしたい → ベルモットを45mlに増やします。液量が増えるぶん、度数は下がります。
- ジンの輪郭を出したい → ジンを45mlに増やします。3材料のうちジンだけが度数の高い酒なので、これだけは強さが上がります。
- 全体を軽くしたい → 3つとも20mlずつにして、氷を入れたグラスで作ります。比率を保ったまま量だけ減らせます。
一度に1か所だけ動かして作り直すと、どの材料が効いているのかが分かります。3つとも同時に変えると、次に何を戻せばいいのか分からなくなります。
なお、混ぜている最中と飲んでいる最中に溶ける氷の水は、この表には入っていません。氷を入れたまま飲む飲み物なので、時間の経過そのものが薄める工程です。最初の一口と最後の一口が別物になるのは仕組み上そうなるので、少しずつ変わっていくのを前提に量を決めます。急いで飲みたくないときは氷を大きくします。
完成の度数は、使うジンの度数で変わる
3つのうち度数が高いのはジンだけなので、完成した一杯の強さはジンの度数に引きずられます。カンパリを25%、スイートベルモットを16%として計算すると、次のようになります。
| ジンの度数 | 1:1:1 | ジン寄り(1.5:1:1) |
|---|---|---|
| 40% | 約27% | 約29% |
| 43% | 約28% | 約30% |
| 45% | 約29% | 約31% |
| 47% | 約29% | 約32% |
| 50% | 約30% | 約33% |
市販のスイートベルモットは15〜16%のものが多く、ここでは16%としました。EUの規則(Regulation (EU) 251/2014)はベルモットを含む香味付けワインの度数を14.5%以上22%未満と定めているので、手元の瓶の表示で置き換えられます。
混ぜる前の計算値なので、氷が溶けるぶん実際に飲む一杯は2割ほど下がり、23〜24%あたりに落ち着きます。それでもジントニックの9〜11%と比べると3倍近い濃さです。液量は90mlとジントニック1杯の3分の1ほどですが、一杯に含まれるアルコールの量はジントニックより多くなります。小さなグラスで、時間をかけて飲む組み立てになっているのはこのためです。
この差が出やすいのが国産クラフトジンで作るときです。図譜に収録した110銘柄のうち、公式サイトで度数を確認できた国産クラフト56銘柄を数えると、45%以上が44銘柄(うち47%以上が22銘柄、50%以上が4銘柄)で、中央値は45.0%でした。45%未満は12銘柄です。レシピ本の分量は40%台前半のジンを前提にしているものが多いので、手持ちが47%なら、同じ1対1対1でも計算上2ポイント強い一杯になります。強さを揃えたいときは、ベルモットを45mlに増やすか、ジンを25mlに減らせば一段下がります。度数の分布と37.5%という線引きの出どころはジンの度数にまとめました。
ボタニカルから銘柄を選ぶときの見どころ
カンパリもベルモットも、もとは植物を漬け込んだ酒です。苦味は根や樹皮から、甘苦い香りは香草から来ています。つまりネグローニは、3つとも植物由来の香りを持つ材料でできているカクテルです。ジン側にどんな素材が入っているかを見ると、材料の系統が揃うのか、別の方向が加わるのかが分かります。
公式サイトにボタニカルの記載がある国産クラフト63銘柄を数えると、次のような分布でした。
| ジン側の素材 | 銘柄数 | ネグローニでの位置づけ |
|---|---|---|
| アンジェリカルート・リコリス・チコリルートなどの根 | 10 | カンパリ・ベルモットと同じ系統の材料 |
| 山椒 | 15 | 香辛料として加わる |
| クロモジ | 7 | 樹木の香りが加わる |
| 柚子(果皮を含む) | 19 | 仕上げのオレンジと同じ柑橘の方向 |
| オレンジの果皮(オレンジピール・橙) | 10 | ガーニッシュと素材が重なる |
| 茶葉(緑茶・煎茶など) | 16 | ジン側だけが持つ要素 |
どれを選んでも成立します。同じ系統の素材が入っていれば3つの材料がひと続きに、違う系統なら足した分だけ要素が増える、という関係です。使われている植物の全体像はジンの原料とボタニカルに、銘柄ごとの構成は図譜のデータ欄に同じ順で並べてあります。銘柄の選び方そのものはクラフトジンの選び方に軸を整理しています。
カンパリとベルモットの扱い|保存と、前もって混ぜておく方法
家で作ったネグローニが思ったものにならないとき、原因がジンではなく開けたあとのベルモットにあることがあります。
3本の保存の仕方は同じではありません。
| 材料 | 土台 | 開栓後の置き場所 | 目安 |
|---|---|---|---|
| ジン | 蒸溜酒 | 常温の棚 | 長く置ける |
| カンパリ | 蒸溜酒ベースのリキュール | 常温の棚 | 長く置ける |
| スイートベルモット | ワイン | 冷蔵庫 | 1か月ほどで使い切る |
ベルモットだけがワインをもとにした酒なので、栓を開けた時点から空気に触れて変わっていきます。常温の棚にジンやカンパリと並べて置くと、数か月後には別のものになっています。一杯に使う量は30mlなので、750mlの瓶なら25杯ぶん。家庭では使い切る前に変わってしまうことが多く、375mlの小瓶があればそちらから始めるほうが確実です。余ったぶんは白ワインの代わりとして、肉や魚を蒸すとき、ソースを煮詰めるときに使えます。
前もって混ぜておく
ネグローニは、果汁も炭酸も使いません。3つとも保存のきく酒なので、先に混ぜて瓶に入れ、冷蔵庫に置いておけます。作るたびに3本を出して量る手間が消えるので、よく飲むなら効きます。
- 空き瓶に、ジン・カンパリ・スイートベルモットを同じ量ずつ入れます(各150mlで5杯ぶん)。
- 氷が溶けるぶんの水をあらかじめ足しておくなら、全体の2割(この量なら90ml)。足さずに、飲むときに氷で薄める形でも構いません。
- 栓をして冷蔵庫へ。飲むときは氷を入れたグラスに90ml注ぎ、オレンジを添えるだけです。
ベルモットが入っているので、冷蔵庫に入れたうえで2〜3週間を目安に使い切ります。棚に常温で置くと、ベルモット単体で置いたときと同じことが起きます。水を足して冷凍庫に入れると凍らずに冷え続けますが、その場合も期限の考え方は同じです。
仕上げのオレンジと、うまくいかないときの切り分け
添えるものには、加わるものの違いがあります。
| 添えるもの | 加わるもの | 使い方 |
|---|---|---|
| オレンジのスライス | 果汁とわずかな果肉 | 縁に掛けるか、沈める |
| オレンジの皮(ピール) | 皮の油の香りだけ | グラスの上で折り、落とすか縁を拭う |
| レモンの皮 | オレンジより鋭い皮の香り | 同上 |
| 何も添えない | 何も加わらない | 3つの材料だけを見たいとき |
ピールの扱いは、皮を幅1cmほど、白い部分をなるべく付けずに削ぎ、外側をグラスに向けて指で二つ折りにするだけです。油が細かい霧になって液面に落ちます。そのまま沈めると時間とともに苦味が出てくるので、香りだけ移して縁を拭って捨てる形でも構いません。
皮は外側をグラスに向けて折ると、油が霧になって落ちます。(AIで生成したイメージです)
うまくいかないときは、原因の場所で直し方が変わります。
| 気になるところ | 主な原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 苦味が立ちすぎる | カンパリの比率、氷が少ない | カンパリを20mlへ。氷を増やして冷やす |
| 甘さが重い | ベルモットの比率 | ベルモットを20mlへ。ジンを45mlに増やす |
| 強くて飲み進められない | ジンの度数が高い | ジンを25mlへ。氷を大きくして時間をかける |
| 味が濁って感じる | ベルモットが古い | 冷蔵保存の新しいものに替える |
| すぐ薄くなる | 氷が小さい、グラスが温い | 大きい氷にする。グラスを先に冷やす |
| 混ざっていない気がする | 注いだだけで止めた | 底から一回転させる。それ以上は回さない |
材料が3つしかないので、比率・ベルモットの新しさ・氷の3つを順に確かめると、たいていはそのどれかに行き当たります。ジンそのものを冷やして飲む場合の考え方はジンのロックとストレートに、割り材で作る場合の比率はジンの割り方にまとめています。
よくある質問
カンパリの代わりになるものはありますか?
カンパリの位置には、ほかの赤いビターリキュール(アペロールなど)を入れることもできます。ただしアペロールは度数が11%前後とカンパリの半分以下で、甘みも強いので、同じ量を入れると別の飲み物になります。名前としても「ネグローニ」ではなくなります。手持ちで代用するより、カンパリを1本買ってしまったほうが、この記事の組み替え(スバリアート、ブールバルディエ、アメリカーノ)まで全部作れるので結果的に無駄が出ません。
ドライベルモットで作ってもいいですか?
作れますが、別の配合になります。スイートベルモットは甘みと赤い色を持ち込む材料で、ドライベルモットにはその甘みがありません。ジン・カンパリ・ドライベルモットの組み合わせは、甘みの受け止め手がいなくなるぶん、カンパリの苦味がそのまま前に出ます。マティーニ用にドライしか持っていない場合は、まず半量をスイート、半量をドライにして様子を見ると、どちらの役割が効いているか分かります。
ステアとビルド、どちらで作るのが正しいですか?
国際バーテンダー協会が示している手順は、氷を入れたグラスに直接注いで静かに混ぜるビルドです。ミキシンググラスで混ぜて氷を漉し、新しい氷に注ぐ作り方もあり、こちらは加水の量を自分で決められます。氷を入れたまま出すか、漉して注ぐかで、飲んでいるあいだの変わり方が違ってきます。家で作るなら、道具の要らないビルドで十分に成立します。
ネグローニ向きのジンはどれですか?
ジンが液量の3分の1なので、細かい香りの差よりも度数の差のほうが出やすい組み合わせです。度数が高い銘柄なら、ベルモットを増やすかジンを25mlに減らせば強さを一段下げられるので、度数で銘柄を外す必要はありません。素材の面では、アンジェリカルートやリコリスのような根を使う銘柄はカンパリ・ベルモットと同じ系統、柚子やオレンジの果皮を使う銘柄は仕上げのオレンジと同じ方向、山椒やクロモジ、茶葉を使う銘柄はジン側だけが持つ要素が加わる、という見方ができます。銘柄ごとの度数とボタニカルは図譜のデータ欄に公式サイトの記載どおり載せています。
作ったネグローニは常温でも置いておけますか?
スイートベルモットが入っているので、混ぜたものは冷蔵庫に置き、2〜3週間を目安に使い切ってください。ジンとカンパリだけなら常温の棚でも変わりませんが、ベルモットはワインをもとにした酒なので、混ぜたあとも同じ扱いになります。氷を入れたグラスに注いだあとの一杯は、時間とともに薄くなっていくので、その場で飲みきる前提です。