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ジンとウォッカの違いとは|原料・製法・味・度数・カクテルを比べて整理

ジュニパーの針葉と青黒い実のついた枝を左に、白樺の枝と樹皮・炭を右に置き、中央下に同じ形の空のグラスを2つ並べた図譜風のイメージ
AIで生成したイメージです
この記事の結論

ジンとウォッカは、土台になる酒までは同じものを使って構いません。分かれるのはそのあとで、ジンはジュニパーベリーを中心とした植物の香りを移して再蒸溜し、ウォッカは原料由来の香味が弱まるように仕上げます。同じ地点から、足す方向と引く方向へ進んだ酒です。この一点が、香りの出方・カクテルでの役割・銘柄の選び方まで決めています。

ジンとウォッカの違いは、ひとことで言えば香りを足して仕上げるか、削いで仕上げるかです。ジンはジュニパーベリー(杜松の実)を中心とした植物の香りを移して再蒸溜し、ウォッカは原料由来の香味が弱まるように蒸溜や炭での処理を重ねます。原料にはどちらも決まりがなく、色はどちらも無色透明、度数も40%前後とほぼ同じです。それでいて飲むと別のものに感じるのは、この最後の一手が違うからです。

この記事では、両者がどこまで同じで、どこから分かれるのかを、製法・法律と店頭での見分け方・度数・香味・飲み方・選び方の順に見ていきます。ジンそのものの成り立ちはジンとはに、クラフトジンという言葉の整理はクラフトジンとはにまとめています。

ジンとウォッカの違いは、最後の一手で決まる

先に結論だけ言うと、ジンは香りを足して仕上げる酒、ウォッカは香りを削いで仕上げる酒です。原料にも土台の酒にも、両者を分ける決まりはありません。分かれ目は、土台ができあがったあとに何をするかの一点にあります。

項目ジンウォッカ
名乗るための条件ジュニパーベリーの香りが主であること原料由来の香味が選択的に弱まるように仕上げること
原料(土台)決まりなし(穀物・糖蜜・米・焼酎など)決まりなし(穀物・じゃがいもなど)
仕上げの工程ボタニカルの香りを移して再蒸溜する蒸溜を重ね、活性炭などで処理する
香りジュニパーを軸に、銘柄ごとに構成が変わる香りの要素を抑える方向でつくる
度数の目安40〜47%が中心40%前後が中心
色無色透明無色透明
味の方向植物の香りが鼻へ抜ける。甘味は加えないものが大半香りの主張が控えめで、口当たりの差が中心
よく飲まれる形ジントニック・ジンソーダ・マティーニ割り材が主役のカクテル・冷やしてストレート
日本の酒税法での区分「スピリッツ」(ジンという品目はない)「スピリッツ」(ウォッカという品目もない)

この表の1行目がすべての出発点です。ジンは「何が入っているか」で名乗る酒で、ウォッカは「何が残っていないか」で名乗る酒だと言い換えられます。以下、それぞれの行を順に開いていきます。

土台の酒は同じでいい|分かれるのは蒸溜のあと

ジンもウォッカも、まず穀物や芋などを発酵させて蒸溜し、土台になる酒をつくります。ここで使われるのは、原料の風味がほとんど残らないところまで純度を上げたニュートラルスピリッツであることが多く、この段階では両者に違いがありません。実際、同じ蒸溜所がジンとウォッカの両方をつくることもあります(この節の最後に例を挙げます)。

銅の単式蒸溜器の上部に吊るした籠にジュニパーの実や柑橘の皮を入れた断面と、炭の粒を詰めた縦長の濾過塔の断面を並べた図 左は籠のボタニカルに蒸気を通して香りを移すかたち、右は炭の層に液体を通して香味を削ぐかたち(AIで生成したイメージです)

道が分かれるのはこの次です。

  • ジン — ジュニパーベリーを中心とした植物(実・皮・葉・根)の香りを移して、もう一度蒸溜します。漬け込む浸漬と、蒸溜器の上部に吊るした籠に蒸気を通す蒸気抽出があり、多くの銘柄が両方を使い分けます
  • ウォッカ — 反対に、原料や発酵の副産物に由来する香味の要素が弱まる方向で仕上げます。蒸溜を重ねる、活性炭で処理する、といった工程がここに入ります

ここでひとつ、よく見かける説明を補っておきます。「ウォッカは白樺の炭でろ過する酒」という言い方は、代表的な一例であって条件ではありません。EUの規則がウォッカに求めているのは、原料由来の香味が選択的に弱まるように蒸溜することで、活性炭による処理はそのあとに置くことのできる工程として書かれています。炭の種類までは指定されていません。白樺の炭は東欧の伝統的な方法としてよく知られているもので、すべてのウォッカがそうしているわけではない、と考えておくと正確です。

ジンの側のつくり方はジンとはで工程ごとに、香りのもとになる植物そのものはジンの原料とボタニカルで扱っています。

ジンとウォッカを両方つくっている蒸溜所

土台が同じでいいことは、つくり手の側を見るとよく分かります。図譜に収録した銘柄のなかにも、同じ蔵でジンとウォッカの両方を製造していると公式に記している蒸溜所があります。

銘柄蒸溜所公式に記されていること
愛知クラフトジン キヨス清洲桜醸造(愛知県)同じ蔵で愛知クラフトウイスキー キヨスや愛知クラフトウォッカ キヨスも製造
Sacred GinSacred Spirits(イギリス・ロンドン)真空蒸溜と有機栽培のボタニカルを用いて、ジンやウォッカ、ウイスキー、ヴェルモットなどを製造

同じつくり手から、香りを足す酒と削ぐ酒の両方が出てくる。ジンとウォッカの違いが原料ではなく工程にあることを、いちばん分かりやすく示している例です。

法律のうえではどう分かれているか

日本の酒税法には、ジンという品目もウォッカという品目もありません。どちらも「スピリッツ」に分類され、その条件はエキス分が2度未満であることだけです。つまり日本の法律の側では、ジンとウォッカは区別されていないことになります。国産のジンのラベルに「スピリッツ」と書かれているのはこのためで、同じ表記がウォッカにも使われます。

一方、EUの規則(Regulation (EU) 2019/787)は両者を別の区分として定義しています。

  • ジン — ジュニパーベリーの香りが主であること。最低度数は37.5%以上
  • ウォッカ — じゃがいも・穀物その他の農産物を発酵させた酒を、原料や発酵の副産物に由来する香味の特徴が選択的に弱まるように蒸溜したもの。最低度数は同じく37.5%以上

原料の欄を見ると、どちらも実質的に自由です。両者を分けているのは、あくまで仕上げに何をしたかという条件のほうだと分かります。なお、ジンの区分はさらにディスティルド・ジン、ロンドン・ドライ・ジンへと細かく分かれていて、こちらはジンの種類に整理しました。

店頭のボトルで見分ける|品目の表示では区別できない

国内で売られている瓶を手に取ると、ジンもウォッカも品目の欄には同じ「スピリッツ」と書かれています。色もどちらも無色透明なので、品目と見た目では見分けがつきません。手がかりになるのは次の3つです。

  • 商品名 — 「ジン」「GIN」「ウォッカ」「VODKA」の語が、ほとんどの場合は商品名かラベルの表に入っています。いちばん確かな見分け方です
  • 原材料名の欄 — ジンは、土台の酒のあとにジュニパーベリーなどの植物の名前が続けて書かれていることがあります。ウォッカは原料の穀物や芋だけが書かれるのが普通です
  • 香りづけの表記 — 柑橘や果実の名前が入ったウォッカ(フレーバードウォッカ)もあります。ただしジンと名乗るには、ジュニパーの香りが主であることが条件です。植物の名前が書いてあるだけでジンとは限らない点は覚えておくと迷いません

ジンのなかには、愛知クラフトジン キヨスのシリーズにある「Blue」のように色が変わることを特徴にした銘柄もあり、無色透明はあくまで大半のジンの姿です。

度数はどれくらい違うか

数字の上では、大きな差はありません。市販のウォッカは40%前後が中心で、ジンは40〜47%が中心です。EUの規則はどちらにも37.5%以上という同じ下限を置いています。

杜松の図譜では国産クラフトジンと海外の定番を同じ軸で記録していて、そのうち公式サイトで度数の記載を確認できた71本を数えると、平均44.9%、中央値45.0%でした。単独でいちばん多い値は45.0%、次が47.0%です。ウォッカの40%前後という中心帯と比べると、ジンのほうがやや上に寄っていることになります。

この差が生まれる理由のひとつは、アルコールが香り成分を運ぶ溶媒だという点にあります。ジンの香りのもとになる精油は水に溶けにくく、アルコールに溶けます。度数が高いほど多くの香り成分を液体のなかに保てるので、割ってもジン側の輪郭が残りやすくなるという関係です。香りを足す酒のほうが度数の中心帯が高いのは、この設計上の都合と無関係ではありません。

もっとも、度数が高いほど香りが強いとは限りません。何をどれだけ入れたかはボタニカルの構成しだいで、度数は「香りをどれだけ抱えられるか」という器の大きさにあたります。数字の分布や、割ったときにグラスが何%になるかの計算はジンの度数にまとめました。

香りと味の傾向|足した酒と引いた酒の飲み口

ここからは、カテゴリー全体としての傾向の話です。銘柄ごとの味の描写は、杜松では実際に一献した銘柄のページにだけ書いています。

ジンに共通しているのは、ジュニパーベリー由来の香りが軸にあることです。針葉樹の樹脂を思わせる香りに、柑橘や胡椒のような要素が重なります。甘味を加えないものが大半なので、口に含んだ印象は甘い酒ではありません。そして、その先は銘柄ごとにまったく違います。柑橘が前に出るもの、茶や山椒が効くものなど、同じジンという名前でも別の酒のように変わるのがこの酒の性格です。

ウォッカは反対に、香りの要素を抑える方向でつくられます。「無味無臭」と説明されることもありますが、実際には土台の原料やつくりの差が口当たりに残ります。ただしその差は、ジンの銘柄間の差と比べればずっと小さいものです。

この違いは、飲み方の設計にそのまま効いてきます。

  • ウォッカは、合わせたものの味がそのまま前に出ます。ジュースでも炭酸でも、割り材が主役になります
  • ジンは、合わせたものと香りが掛け合わさります。同じトニックで割っても、銘柄が変わると別の飲みものになります

ストレートやロックのように、そのまま口に含む飲み方での違いも同じ理屈です。ウォッカは冷やして飲まれることが多く、ジンは常温に近い温度で香りの立ち方を見る飲み方があります。この飲み分けはストレートとロックに詳しく書きました。

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カクテルと飲み方|同じ形のカクテルが2つある理由

バーのメニューを見ると、ジンとウォッカで名前が対になっているカクテルがいくつもあります。これは偶然ではなく、どちらも無色で度数が近いため、同じレシピの土台として入れ替えが利くからです。

背の高いタンブラー、脚つきのカクテルグラス、銅のマグを横一列に並べ、ライムの輪切りとジュニパーの実を添えた図 同じ形のグラスに、どちらの酒も入る。変わるのは香りの層です(AIで生成したイメージです)

形ジンでつくるとウォッカでつくると
ベルモットと合わせるマティーニウォッカマティーニ
トニックで割るジントニックウォッカトニック
炭酸で割るジンソーダウォッカソーダ
ライムの酸を合わせるギムレットウォッカギムレット
生姜の風味とライムジンバックモスコミュール

入れ替えたときに何が変わるかというと、香りの層が1枚増えるか、減るかです。ウォッカでつくると、割り材の味が輪郭のはっきりした形で出ます。ジンでつくると、そこにジュニパーと各銘柄のボタニカルが重なります。トニックの苦味とジュニパーの相性がよく語られるのは、この重なり方がうまくいく組み合わせだからです。

どちらが良いという話ではなく、割り材の味をまっすぐ味わいたいときはウォッカ、割り材と酒の香りの組み合わせを楽しみたいときはジン、という使い分けになります。作り方そのものはジントニックの作り方とジンソーダに、カクテル全般はジンのカクテルとマティーニの作り方にまとめています。

どちらを選ぶか|家で飲むときの分かれ目

1本を選ぶときの判断は、次のように整理できます。

  • 合わせるものを毎回変えて楽しみたい/割り材の味を主役にしたい → ウォッカ。何と合わせても土台が邪魔をしません
  • 同じ割り方でも銘柄ごとの違いを味わいたい → ジン。ボタニカルの構成が変われば、同じジントニックが別の飲みものになります
  • どちらか1本しか置けない → 作れるカクテルの幅はほぼ同じなので、香りの違いを楽しむかどうかで決めて構いません

ジンを選ぶ場合は、銘柄ごとの差が大きいぶん、見るべき点がはっきりしています。杜松の図譜では全銘柄で度数・ボタニカル・ベーススピリッツの3点を同じ位置に並べていて、このうちボタニカルの主役が何かを見ると性格の見当がつきます。選び方の手順はジンの選び方に、銘柄は図譜の一覧から辿れます。

最後に、国産のジンについてひとつ付け加えておきます。ウォッカが土台の酒から個性を引いていく方向でつくられるのに対して、国産クラフトジンは土台の酒そのものを個性にしているものが少なくありません。図譜に収録した銘柄のうち、公式にベースの記載がある国産クラフト24銘柄を数えると、21銘柄が米・焼酎・泡盛など日本の蒸溜酒を土台にしていました。焼酎蔵や日本酒蔵が始めたジンが多いためですが、結果として、香りを足す前の段階からウォッカとは反対の方向を向いていることになります。ジンとウォッカの分かれ目がいちばん大きく開いているのは、この一群かもしれません。

飲み方から入るなら飲み方から選ぶを、酒そのものの成り立ちからならジンとはを、それぞれの入口にしてください。

ラム・テキーラも並べると|世界の4大スピリッツの中での位置

ジンとウォッカは、ラム・テキーラと並んで「世界の4大スピリッツ」と呼ばれることがあります。4つを並べると、ジンとウォッカだけが原料で決まらない酒だということが見えてきます。

何で決まるか原料仕上げの方向
ジンジュニパーベリーの香り決まりなし(穀物・糖蜜・米・焼酎など)植物の香りを足す
ウォッカ原料由来の香味を弱めること決まりなし(穀物・ジャガイモなど)香味を削ぐ
ラム原料サトウキビ(糖蜜・搾り汁)原料の香りを残す
テキーラ原料と産地アガベ(リュウゼツラン)・メキシコの指定地域原料の香りを残す

ラムはサトウキビ、テキーラはアガベと、原料そのものが名前の条件になっています。これに対してジンとウォッカは、何からつくっても名乗れる代わりに、仕上げ方が条件です。だから「ジンとウォッカの違いは何か」という問いには、原料を比べても答えが出ず、最後の一手を比べることになります。ウイスキーとの違いはジンとウイスキーの違いでも扱っています。

よくある質問

ジンとウォッカは、味にどれくらい違いがありますか?

カテゴリーとしての傾向でいえば、ジンはジュニパーベリー由来の針葉樹のような香りと、柑橘の皮やスパイスの香りが前に出ます。ウォッカは原料由来の香味が弱まるように仕上げるため、香りの主張が控えめで、割り材の味がそのまま前に出ます。同じ量の炭酸水で割って並べると、香りが残るのがジン、割り材の印象が勝つのがウォッカ、という差になりやすい組み合わせです。

ジンとウォッカの違いを一言で言うと何ですか?

香りを足して仕上げるか、削いで仕上げるかの違いです。土台になる酒は同じニュートラルスピリッツで構いませんが、ジンはそこにジュニパーベリーを中心とした植物の香りを移して再蒸溜し、ウォッカは原料由来の香味が弱まるように仕上げます。同じ地点から反対方向へ進んだ酒だと考えると分かりやすくなります。原料そのものには、どちらも決まりがありません。

ウォッカは必ず白樺の炭でろ過するのですか?

いいえ。EUの規則がウォッカに定めているのは、原料や発酵の副産物に由来する香味の特徴が選択的に弱まるように蒸溜することで、活性炭による処理はそのあとに置くことのできる工程として書かれています。炭の種類までは指定されていません。白樺の炭は東欧で知られた伝統的な方法のひとつで、すべてのウォッカがその方法を取っているわけではありません。

ジンとウォッカで、カクテルは入れ替えられますか?

形のうえでは入れ替えられます。マティーニとウォッカマティーニ、ギムレットとウォッカギムレットのように、同じレシピで名前が対になっているカクテルがいくつもあります。変わるのは香りの層で、ウォッカでつくると割り材の味がまっすぐ出て、ジンでつくるとそこにジュニパーとボタニカルの香りが重なります。どちらが正しいということはなく、狙いに応じた使い分けです。

ラベルを見ればジンかウォッカか分かりますか?

品目の欄では分かりません。日本ではジンもウォッカも品目は「スピリッツ」と表示されるためです。見分けるときは商品名に入っている「ジン」「ウォッカ」の語を見るのが確実で、補助として原材料名の欄にジュニパーベリーなどの植物が並んでいるかどうかも手がかりになります。柑橘などで香りをつけたウォッカもあるので、植物の名前があるだけでジンと決めないほうが安心です。

度数はどちらが高いのですか?

大きな差はありません。ウォッカは40%前後、ジンは40〜47%が中心で、EUの規則はどちらにも37.5%以上という同じ下限を置いています。杜松の図譜で公式に度数を確認できたジン71本では平均44.9%、中央値45.0%でした。ジンのほうがやや上に寄るのは、アルコールが香り成分を運ぶ溶媒であり、度数が高いほど割ったときに香りが残りやすいという事情と関係しています。

杜
杜松 編集部国産クラフトジンを1本ずつ図譜にしています。事実は公式の出典から、味は飲んだ人の言葉から。

新しい図譜と、一献の便りを、月に二度。

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